研究課題/領域番号 |
23790937
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊原 敬文 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員 (60594182)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 アメリカ合衆国 |
研究概要 |
申請者は腎臓近位尿細管特異的SLCO4C1トランスポーターを利用した腎不全治療の臨床応用に向けて、ヒトの生理的環境下でのSLCO4C1の機能や発現の検討を目的としている。この目的のため、申請者はヒトiPS細胞から近位尿細管を作製するために、その前段階であるヒトiPS細胞由来の中間中胚葉(OSR1陽性細胞)から腎前駆細胞(SIX2陽性細胞)を分化誘導するプロトコールの確立を目指している。平成23年度は(1) ヒト多能性幹細胞由来中間中胚葉から腎前駆細胞への分化誘導プロトコールの確立、(2) 腎前駆細胞マーカー遺伝子SIX2のレポーターiPS細胞株の樹立を目標としていた。(1)に関しては、共同研究者の長船らが開発した誘導法を用いてiPS細胞より分化誘導したOSR1陽性細胞に対して、当研究室が有する約40種類の増殖因子、および約8000種類の低分子化合物を試し、SIX2陽性細胞の分化誘導剤の探索を行った。当初は抗ヒトSIX2抗体を用いた免疫染色法とイメージアナライザーを組み合わせて、抗ヒトSIX2免疫染色像の解析方法を確立し、SIX2分化誘導剤の探索を行った。さらに、下記のSIX2-tdTomatoレポーター細胞株が完成してからは、より感度の高いレポーター細胞株を用いた高速スクリーニングを行っているが、明らかなSIX2分化誘導剤は発見できていない。(2)に関してはOSR1-GFP knock-in human iPS cellのSIX2遺伝子座にtdTomatoを相同組換え法によりknock-inしたヒトiPS細胞ダブルレポーター株を樹立した。このレポーター細胞株を胚様体形成による3次元培養法で分化誘導することで、5%前後のSIX2陽性細胞を単離することに成功し、Single cell RT-PCR、免疫染色法によりtdTomato陽性細胞にSIX2が発現することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は(1) ヒト多能性幹細胞由来中間中胚葉から腎前駆細胞への分化誘導、(2) 腎前駆細胞マーカー遺伝子SIX2のレポーターiPS細胞株の樹立を目標としていた。(1)に関しては、抗ヒトSIX2抗体を用いた免疫染色法とイメージアナライザーを組み合わせて、高速かつ定量的な抗ヒトSIX2免疫染色像の解析方法を確立した。しかし、これまでに当研究室が有する約40種類の増殖因子、および約8000種類の低分子化合物を試し、イメージアナライザーによるSIX2分化誘導剤の探索を行っているが、明らかなSIX2分化誘導剤は発見できていない。さらに、下記のSIX2-tdTomatoレポーター細胞株が完成してからは、より感度の高いレポーター細胞株を用いた高速スクリーニングを行っているが、同様に現時点では明らかなSIX2分化誘導剤は発見できていない。(2)に関してはOSR1-GFP knock-in human iPS cellのSIX2遺伝子座にtdTomatoを相同組換え法によりknock-inしたOSR1-GFP, SIX2-tdTomatoダブルレポーター細胞株を樹立した。このレポーター細胞株を用いることで、分化誘導したSIX2陽性細胞の誘導効率の評価、および抽出を行うことが可能となった。(1)に関しては予定よりも遅れているが、スクリーニングの条件設定などは終了している。(2)に関してはほぼ達成されていることから、全体としてはやや遅れている状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の目標であったSIX2分化誘導剤のスクリーニングは、OSR1-GFP, SIX2-tdTomatoダブルレポーター細胞株から誘導したOSR1陽性細胞を用いて、当研究室が有する残りの約20000種類の化合物の中から、SIX2分化誘導剤の探索を継続して行う。さらに平成24年度は(3) ヒトiPS細胞から作製された腎前駆細胞の機能の検証、(4) ヒトES細胞における分化誘導効率の検討を行う予定であった。(3)に関しては、現在、胚様体形成による3次元培養法を用いて、5%前後のSIX2陽性細胞の単離に成功しているが、腎前駆細胞としての解析を行うには分化誘導効率が不十分なため、まずSIX2分化誘導化合物の探索を優先して行う。分化誘導化合物を同定することができれば、iPS細胞より分化誘導したSIX2陽性細胞と、Six2-GFP knock-inマウスからsortしたSix2陽性腎前駆細胞との遺伝子発現プロファイルを比較する。さらに免疫不全マウスの腎被膜下への移植や、マウスやニワトリ胚の胎生腎臓に移植後に器官培養を行い、糸球体や尿細管などの多種類の腎臓の細胞に分化するか否かを検証する。また急性腎不全モデルマウスの腎臓に移植を行い、腎不全で障害された腎臓に生着し治癒を促進するか否かを検討する。(4)に関しては胚様体形成による3次元培養法による分化誘導法や、新たに同定できたSIX2誘導化合物を用いた誘導法によって、ヒトES細胞やマウスiPS細胞においてもSIX2陽性細胞が作製できるか否かを、RT-PCR、免疫染色法を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も、SIX2陽性細胞を得るための細胞培養用試薬、細胞培養用器具などの消耗品は引き続き必要である。また、得られたSIX2陽性細胞と、Six2-GFP knock-inマウスからsortしたSix2陽性腎前駆細胞との遺伝子発現プロファイルを比較するためのマイクロアレイ用試薬を購入する。さらに、得られたSIX2陽性細胞が糸球体や尿細管などの多種類の腎臓の細胞に分化するか否かを検証する移植実験を行うために、実験動物が必要となる。糸球体や尿細管へ分化したことを確認するための抗体も購入予定である。大型機械に関しては、京都大学iPS細胞研究所に設置されているものを利用するため、特に購入予定はない。
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