研究課題/領域番号 |
23790939
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
桑原 孝成 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (00393356)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 脂質代謝異常 / TLR4 / MRP8 |
研究概要 |
申請者は糖尿病マウス糸球体を用いた独自のスクリーニング法で着目したTLR4とその内因性リガンドMRP8が、STZマウスへのHFD負荷により糸球体で発現が増強していたため、脂質による糖尿病性腎症悪化に果たすMRP8/TLR4の役割を検討した。野生型(WT)およびTLR4欠損(KO)マウスにSTZ、HFDを投与して両者を比較。WTとKOで糖・脂質代謝異常は同等にも関わらずKOではHFD追加による腎症の悪化が著明に抑制されていた。STZ-HFDマウス糸球体で出現するMRP8陽性細胞の局在はマクロファージ(Mf)であった。MfにMRP8を添加するとLPSと同等のTNFa, IL-1b発現誘導を、そしてMRP8自身のautoinductionを引き起こした。Mfへの脂肪酸刺激は高糖濃度条件下でのみMRP8発現を増強し、TLR4欠損Mfではこの増強効果を認めなかった。以上より糖と脂質はMf上に発現するTLR4依存的にMRP8発現を相乗的に誘導することで糸球体病変を進展させると考えられた。TLR4下流の細胞内シグナルのウエスタンによる検討でTRIF-dependent経路の活性化の関与が推測されたが、網羅的に解析する手法(PCR array)でもこれを裏付ける結果が得られた。さらに一連の研究の中で糖尿病における脂質負荷は腎組織局所のRA系活性化を引き起こすことが分かった。STZマウスへのアンジオテンシンII投与は糸球体内メサンギウム細胞およびMfにおけるMRP8発現を強く誘導した。現在RA系とMRP8/TLR4シグナルのクロストークが病態悪化に果たす役割についても検討を進めている。腎生検標本を用いた検討においてmRNAレベルでヒトにおいても糸球体MRP8発現が糖尿病性腎症で大きく増加していた。さらに免疫染色による検討では糸球体MRP8発現が腎症の程度と関連している可能性を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した当初の23年度計画はほぼ終了し、現在24年度計画および現研究課題実施中に新たに追加した新規研究計画についても開始している。具体的にはMRP8の局在同定、TLR4欠損マウスおよびTLR4欠損マクロファージを用いた機能的意義の検討、およびin vitroの系でマクロファージにおいて糖と脂質がMRP8発現に与える影響の検討などである。また24年度計画で予定しているヒトの腎生検標本を用いた検討についてもmRNA定量や免疫染色によるタンパク発現の評価はすでに終了しており、現在解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
TLR4下流のTRIF-dependent経路を特異的に遮断するペプチドを用いて病態への効果を検討する。またRA系とMRP8/TLR4シグナルのクロストークによる病態の解明を目指してARB投与効果やin vitroでは糸球体内在細胞とマクロファージを用いた検討を行う。内因性リガンドMRP8の機能解析を目的としてリコンビナントタンパクの投与実験をin vitro, in vivoで、さらには遺伝子改変動物の作製も計画していく。腎生検標本の検討ではさらに症例数を増やして横断的検討のみならず腎予後との関連についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
TLR4下流の細胞内シグナルや内因性リガンドMRP8の詳細な機能解析を行うために必要な試薬、タンパクの購入、並びに遺伝子改変動物作成に向けてのconstract構築に必要な物品の購入。ヒト腎生検標本処理のための費用など。他、消耗品など
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