研究課題
急性腎障害(AKI)は生命予後を規定する因子であり,その病態形成の背景に炎症性変化及び血液凝固異常があることが推測される.本研究の目的は,虚血/再還流モデルでのAKI進展における炎症性サイトカイン オステオポンチン(OPN)の役割を解明することである.AKIモデルではWT-AKIマウスで著明な血清BUN・Crの上昇を認め,OPN KOマウスにおいて有意に抑制されていた.WT-AKIマウスでは腎髄質において広範囲に組織病変が観察された.これらの組織学的変化についてもOPN KO-AKIマウスにおいて著明に抑制されていた.興味深いごとにN-Half OPN特異抗体を用いたタンパク解析では,WT-AKIマウスにてN-Half OPNタンパクの発現増加を認めた.免疫組織染色では全長型OPN及びN-Half OPNとも腎髄質外層の尿細管中心にその局在を認め,その蛋白発現は著明に増加していた.さらにアポトーシスの検討ではWT-AKIマウスにて有意にTUNEL陽性細胞の増加を認め,OPN KO-AKIマウスでは抑制された.次に全長型OPN及びN-Half OPN過剰発現マウスの作製を行った.C57BL/6マウスをドナー及びレシピエントとしてCAGプロモーターを利用し,その下流にヒトOPNcDNAまたはヒトN-Half OPNcDNAをマイクロインジェクション法にてマウスに導入した.現在得られた27ラインのうち全長型OPNについては11ライン,N-Half OPNは5ラインについてtransgeneの発現を認めた.現在ライン間での発現レベル及び発現臓器をWestern blot解析で確認している段階である.生本研究はAKIにてOPN特にN-Half OPNの関与を初めて証明した研究であり,将来のAKIの治療戦略を確立するうえで大きな意義を持つものと考えられる.
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Nephron Extra
巻: 2 ページ: 87-103