研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)の発症および進展機序を解明するために、CKDの病態に重要な役割を担っている腎糸球体内皮細胞、腎尿細管細胞に着目した。未分化ヒトES細胞 (hES)から内皮細胞への誘導法は、私たちの報告した既報の弱点を克服したGSK3β抑制薬を用いた誘導法を用いた。私たちはこの誘導法で得られた内皮細胞は抗老化性が高いことを報告している。一方で、未分化ヒトES細胞から尿細管上皮細胞への分化誘導の報告はない。そこで我々は腎尿細管上皮細胞に特異的に発現しているタンパクであるKidney- specific protein (KSP) を指標として検討した。hESはkhES-1株を使用した。 GSK3β抑制薬を用いて中胚葉への分化を促進し、EGFを含む低血清培地により上皮化を促進した後に複数の増殖因子を含む培地で培養した。その過程において、KSPを含む腎発生関連遺伝子を半定量PCR法で評価した。本誘導過程において、後腎間葉マーカーであるPAX2発現は上昇し (182.3±69.4-fold vs. hES, p<0.05) 、ネフロン前駆細胞に発現するSix2発現は低下した (0.32±0.22-fold vs. hES, p<0.05) 。複数の増殖因子を含む培地に交換すると、Six2発現は一旦上昇し、その後低下した。KSP発現はSix2が低下したところより上昇し、10日目まで培養したところ有意な上昇を認めた (40.4±16.3-fold vs. hES, p<0.05) 。抗KSPモノクローナル抗体を用いたFlow Cytometryによって、約5%のKSP陽性細胞を分取し、そのKSP陽性細胞をマトリゲル上で培養したところ、尿細管様の管状構造を形成した。今後は、尿細管上皮細胞の解析を進め、内皮細胞と共培養を行い、CKDの発症および進展機序の解明に繋げたい。
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