研究課題
造血幹細胞移植後に腎障害を呈した腎GVHDの症例、特に腎微小血管の内皮細胞に対する抗体の産生により発症したchronic humoral GVHDの関与が考えられる移植後TMAの症例を経験し論文として報告した。現在、造血幹細胞移植後TMAの治療は免疫抑制剤の減量が行われることが多いが、造血幹細胞移植後TMAの原因にChronic GVHDが関与する場合には免疫抑制薬の増量を、もしくは抗体が関連している場合には血漿交換や抗CD20抗体の使用が必要となる。本研究で、臨床で行われた造血幹細胞移植症例や、動物実験を用いて作成したchronic GVHDモデルにおける造血幹細胞移植後TMAを解析し、特にchronic humoral GVHDによる造血幹細胞移植後TMAの存在と、その特徴を明らかにし、移植後TMAの治療や予後の大幅な改善を目指すことが目標である。当院で経験した造血幹細胞移植症例の腎生検例と剖検例の腎病変について臨床病理的解析を行い、臨床における造血幹細胞移植後TMAの発症機序にchronic GVHDが関与することを報告した。現在も症例数を蓄積中である。
2: おおむね順調に進展している
造血幹細胞移植症例の2腎生検例と5剖検例の腎病変について臨床病理的解析を行い、臨床における造血幹細胞移植後TMAの発症機序にchronic GVHDが関与し、その中にchronic humoral GVHDが関与する症例があることを論文として報告した。さらに、chronic humoral GVHDによる造血幹細胞移植後TMAの頻度や予後を含め臨床病理的な特徴を明らかにするために症例を蓄積しているところである。また、ラットの急性GVHDと慢性GVHDのモデルを作成するため動物実験を進めているところである。
ラットのGVHDモデルの確立とそのモデルを用いて、放射線照射や免疫抑制薬の移植後TMAに対する影響、T細胞性や抗体依存性のchronic GVHDの関与を検討し、造血幹細胞移植後TMAの発症原因を明らかにする。さらに、患者血清中や動物モデルでの造血幹細胞移植後TMAを発症させる抗体の存在とその特徴を明らかにする。
臨床検体および動物実験の腎組織の組織学的検討のため、引き続き抗体などの試薬の購入、画像解析のための消耗品の購入等に使用する。また国内・外の学会に参加し、研究成果の発表をおこなう。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Pathology International
巻: 61 ページ: 518-527
10.1111/j.1440-1827.2011.02704.x