研究課題/領域番号 |
23790964
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
藤田 恵美子 日本医科大学, 医学部, 助教 (70600617)
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キーワード | 糸球体腎炎 / マクロファージ / 炎症細胞 / 炎症 / 腎臓 / 病理学 |
研究概要 |
本研究は実験的腎疾患における抗炎症性マクロファージの誘導機序を解明し、その応用による新しい治療法の開発を目指すものである。In vitroで誘導した抗炎症性マクロファージの特徴を明らかにし、実験的糸球体疾患への細胞移入によるin vivoでの病変進展の抑制効果を検証している。また、ヒト糸球体腎炎を含む腎疾患の疾患活動性とマクロファージの形質との関係を明らかにし、腎生検病理組織診断におけるマクロファージの形質の観察の重要性を明確にすることを目的に研究を行っている。 今年度は1)種々のヒト糸球体腎炎での疾患活動性とマクロファージの浸潤の重要性について検討を進めた。ヒト糸球体疾患、特に糸球体腎炎を主体にマクロファージの重要性を検討した。CD68でマクロファージを同定し、CD163でM2マクロファージを、HLA DRを用いてM1マクロファージを染色している。M2マクロファージが有意なマクロファージ浸潤を認める場合には糸球体内皮細胞傷害は比較的軽度であるのに対し、M1マクロファージが有意に係蹄内へ浸潤している疾患では、糸球体内皮細胞傷害が高度となり壊死性病変を形成することを確認した。M1マクロファージ以外にMPO陽性マクロファージも壊死性病変との関連が示唆され、そのマクロファージの特徴についても検討を行っている。 2) In vitroで骨髄細胞からマクロファージを誘導する方法はすでに成功し手法が確立した。その誘導マクロファージをもちいて、誘導過程でスタチンを投与し、抗炎症性マクロファージへの分化手法についてさらなる検討を進めるとともに、誘導マクロファージの特徴に関する検討を行っている。 3) 腎炎とヒト末梢血でのマクロファージの特徴を検討する目的で、日本医科大学および日本医科大学付属病院における倫理委員会より研究の申請許可を得て、現在症例実績の蓄積が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実験的腎疾患における抗炎症性マクロファージの誘導機序を解明し、その応用による新しい治療法の開発を目指している。In vitroで誘導した抗炎症性マクロファージの特徴を明らかにし、実験的糸球体疾患への細胞移入によるin vivoでの病変進展の抑制効果を検証する。また、ヒト糸球体腎炎を含む腎疾患の疾患活動性とマクロファージの形質との関係を明らかにし、腎生検病理組織診断におけるマクロファージの形質の観察の重要性を明確にすることを目的に研究を進めている。1)種々のヒト糸球体腎炎での疾患活動性とマクロファージの浸潤の重要性について検討が進んでいる。マクロファージ浸潤を認めるヒト糸球体腎炎で、M2マクロファージが有意な場合には糸球体内皮細胞傷害は比較的軽度であるのに対し、M1マクロファージが有意な疾患では、糸球体内皮細胞傷害が高度となり壊死性病変を形成することが示された。M1マクロファージ以外にMPO陽性マクロファージも壊死性病変との関連が示唆され、そのマクロファージの特徴についても検討を行うとともにさらなる症例数の蓄積を進めており順調に研究が進行していると考える。 2) In vitroで骨髄細胞からマクロファージを誘導する方法はすでに成功し手法が確立した。その誘導マクロファージをもちいて、誘導過程でスタチンを投与し、抗炎症性マクロファージへの分化手法についてさらなる検討を進めるとともに、誘導マクロファージの特徴に関する検討を行っている。 3) 腎炎とヒト末梢血でのマクロファージの特徴を検討する目的で、日本医科大学および日本医科大学付属病院における倫理委員会より研究の承認を得て、現在症例実績の蓄積を進めており、おおむね順調に研究が進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)種々のヒト糸球体腎炎での疾患活動性とマクロファージの浸潤の重要性について検討を進めており、現在のところ症例数はまだ十分ではないが、マクロファージと疾患活動性病変との関連については一定の結果が得られつつある。今後は症例数を増やすとともに、マクロファージの性質についても詳細に検討を進める。M1マクロファージのマーカーとしてHLA DR、CD169を用いているが、さらなる特異的なマーカーが必要であり検討している。また、M1マクロファージ以外にもMPO陽性マクロファージが疾患活動性に影響を与えることが示唆されており、その特徴に関する検討を進める。2) In vitroでのマクロファージの誘導については、骨髄細胞からのマクロファージの誘導手法がおおむね確立できた。誘導過程でスタチンを使用し、その後の誘導マクロファージの抗炎症性の性質について検討を進めている。フローサイトメトリー、western blotやreal-time PCRを用いて産生サイトカインの特徴を明らかにし、マクロファージの性質を検討する。さらに、in vitroでの誘導マクロファージを、in vivoのラット anti-GBM腎炎モデルへ投与し、腎炎抑制効果を確認する。 3) ヒトの末梢血でのマクロファージの特徴を検討する目的で、日本医科大学および日本医科大学付属病院での臨床研究が倫理委員会より承認され、腎疾患症例の末梢血を用いて、単球/マクロファージの存在と性質を検討し、末梢血の単球/マクロファージの動態と腎生検で得られた腎臓局所での動態を比較検討を進めている。現在はさらなる症例数の蓄積を目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はヒト腎生検標本の炎症細胞浸潤の特徴、ヒト末梢血の炎症細胞の特徴、in vitroでのマクロファージの誘導とそのマクロファージの特徴の検討を行っている。次年度は、ヒト腎生検組織とヒト末梢血の検討で主にフローサイトメトリーと組織の免疫染色を用いるが、研究費はその際の各種抗体や消耗品に使用する。さらにin vitroでのマクロファージの誘導と誘導マクロファージの性質の検討を行うが、研究費はマクロファージの誘導のための培養関連消耗品やサイトカイン、マクロファージの性質の検討のためのフローサイトメトリー、western bot、ELISAやreal-time PCRの消耗品の購入に用いる。研究のための情報収集、研究会や学会の参加やそのための旅費にも使用する。また結果の解析のためのコンピュータ、およびソフトウェアを購入する予定である。
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