研究概要 |
(研究1)ICU領域におけるAKIの疫学研究:名古屋大学医学部附属病院ICUに入室した症例(n=2582)を対象とした解析では, AKIN分類およびKDIGO分類におけるAKIの発症率はそれぞれ29.6%, 38.5%であった. 多変量ロジスティク解析において, AKIは院内死亡に対して関連性がみられ, AKIの重症度に従って, オッズ比の上昇が認められた. 院内死亡に対するROC(receiver operating characteristic)曲線下の面積は, AKIN分類: 0.73, KDIGO分類: 0.76であった. これまで本邦で報告の乏しいAKIの実態を, 本研究で明らかにした.(研究2)急性期肺腎クロストークの検討:非侵襲的陽圧呼吸管理(NPPV)導入となったALI/ARDS症例のうち、NPPV導入日もしくはその翌日に気管支肺胞洗浄を施行した52症例を対象とし、気管支肺胞洗浄液中の、炎症細胞(Neu.,MΦ)、向および抗炎症性メディエーター(IL-1β,sTNF-α,IL-6,IL-8,IFN-γ,MCP-1,IL-10)、血管内皮傷害マーカー(TM)、肺胞上皮傷害マーカー(SP-D)、接着分子(ICAM-1)、凝固マーカー(PAI-1)の測定を行い、AKIの有無によるプロファイルの違いを示した。AKIの存在が上記メディエーターのdysregulationを介し、非心原性肺水腫の病態であるALI/ARDSの肺局所におよぼす影響を明らかにした。 (研究3)尿中ミドッカインのAKIバイオマーカーとしての有用性:基礎研究において尿細管上皮障害マーカーとなることが示されているミッドカインに注目し、実地臨床でAKI診断のバイオマーカーとなり得るか検証するための臨床サンプル収集を進めた。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の75%を研究に使用する消耗品に計上した。尿および血中におけるミッドカイン・既知のバイオマーカー(NGAL、IL-18、L-FABP、NAGなど)、RAS (renin, angiotensinogen, ACE, AT-I, AT-II)・ケモカイン(MCP-1, TNF-α, IL-6 etc.)・接着因子(ICAM-1)などの発現を検討するために、ELISAキット、マルチプルサイトカインアレイキット、プラスティク器具の購入を予定している。また経費の20%を各種調査・研究の打合せ、研究成果の発表に関する国外の学会のための旅費・及び論文作成費用として計上した。各種調査・研究の打合せの経費が高額であるが、本研究は多方面から生体サンプルおよび臨床データーを収集する必要がある。
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