初年度は、我が国における「てんかん患者にみられる原因不明の突然死,SUDEP (Sudden Unexpected Death in Epilepsy) 」の実態が不明であったため、まず自験例の調査を行った。SUDEPの危険因子を後方視的に検討したところ、基本的には従来の欧米における報告と変わらなかったが、抗てんかん薬の多剤併用や発作コントロール不良といった従来危険因子と考えられてきた因子が必ずしも危険因子とはならない可能性が示唆された。SUDEPの原因・病態を解明する上で興味深い結果であり、2011年のアメリカてんかん学会で報告した。 研究計画時にSUDEPの危険因子として注目していた中枢型睡眠時無呼吸に関しては、てんかん患者の発作間欠時(発作でない時)に観察されることが多い訳ではないと判明した。一方、発作時の中枢型無呼吸に関しては興味深い知見が得られた。すなわち、家族性両側側頭葉てんかん患者において、ビデオ脳波モニタリングと終夜睡眠ポリグラフの同時記録中に発作時の中枢型無呼吸を記録することに成功した。左右側頭葉に由来する発作を両方捉えることができ、左右で脳波上の発作起始と中枢型無呼吸の起始の時間的関係が異なる(左側頭葉起始の発作では無呼吸の出現が脳波上の発作起始に先行する)という興味深い結果が得られた。SUDEPの病態を考える上で重要な中枢型無呼吸の出現に、左右側頭葉の関わりが異なる可能性を示唆しており、2012年3月の日本神経学会東北地方会、2012年の日本てんかん学会で報告した。 さらに、本研究を通じて、心臓自律神経機能に関する重要な知見も蓄積された。とりわけ、側頭葉てんかんの発作時にみられる頻拍の出現や心拍変動パターンが、左右側頭葉に由来する発作でそれぞれ異なるということが明らかにされたため、結果を本年6月の国際てんかん学会で発表する予定である。
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