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2011 年度 実施状況報告書

脳動脈新生の制御による脳梗塞治療法開発の基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23790980
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

石橋 哲  東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (30533369)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード脳梗塞 / 血管新生 / 慢性低還流 / 動物モデル / 再生医療
研究概要

脳梗塞は日本における臓器別死因第一位の疾患であり、例え救命できたとしても後遺症が永続し寝たきりの最大の原因となっている。すなわち、中枢神経系の再生能力が乏しいことを考えると、脳血流低下部位をいかに梗塞に陥らせないかが重要な治療戦略と考えられる。脳血管の閉塞による脳梗塞、あるいは主幹動脈の高度狭窄による脳血流低下状態では、ウィリス動脈輪や脳軟膜動脈を介した側副血行路により、血流低下部位の血流を保とうとする現象が見られ、特に側副血行路が発達した症例では梗塞に陥る領域が小さいことが知られている。実際に、成体脳であっても脳梗塞後に新たな血管が形成される現象が認められ、大きく分類してAngiogenesis(血管新生)及びArteriogenesis(動脈新生)の二つが知られている。特に動脈新生は機能する動脈として脳血流保持効果が高いと考えられる。本研究では脳動脈新生発達メカニズムを解析し、実際に動脈新生を促すことによる詳細な治療効果の検討をまず脳梗塞モデル動物で行い、臨床応用を目指すことを目的とする。具体的には、以下の3点を検討する。1.脳血管の可視化、分裂細胞の標識、炎症細胞の解析、NanoSPECT/CTによる脳血流の解析(機能画像)などの方法を用いて、脳血流高度低下時に発達することが知られている脳動脈の新生(Arteriognesis)メカニズムを明らかにする。2.実際に、脳動脈の新生(Arteriogenesis)を来した状態での、脳保護作用を検討するために慢性低灌流モデルでの中大脳動脈閉塞を行い、梗塞出現時の動脈新生の状態及び脳保護効果の有無を検討する。3.早期の臨床応用を目指し、すでに下肢閉塞性動脈硬化症で臨床治験が行われている動脈新生治療法 (bFGF持続投与法など) の脳動脈への効果、及び急性期脳梗塞に対する治療効果を確認する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度は、以下の二点の研究実施計画を挙げており、おおむね計画通りに研究を進捗することができた。1. 慢性低灌流モデルの動脈新生、脳血流の解析2. 動脈新生時の炎症、再生メカニズムの解析慢性低還流モデルの動脈新生、脳血流の解析に関しては、再現性よいモデルマウスを作成し、経時的に脳血流の評価をすることができた。in vivo動物用SPECT/CT高解像度イメージングシステムであるNanoSPECT/CTでの、脳血流の経時的、三次元的評価法も確立することができ、今後の検討で信頼のおける脳血流の評価法となるとともに、血管新生関連蛋白の新規トレーサーも使用可能となった。また、分裂細胞をBrdUで標識することにより、動脈新生における分裂細胞の評価を行うことができた。慢性低還流時の動脈新生時に血管内皮細胞のみならず、平滑筋細胞も盛んに分裂していることが確認できた。低還流刺激による動脈新生において、動脈構成細胞の増殖が関与し、増殖を賦活化することで、さらなる治療効果を得られる可能性が考えられた。上記の結果の一部は、第52回日本神経学会学術集会で報告した。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、予定通り以下の項目を検討し、臨床応用に向けた脳動脈新生促進療法の検討を行いたい。1. 動脈新生の脳梗塞に対する効果の検討慢性低灌流モデルで最も動脈新生が促進される時期は、平成23年度の検討から慢性低還流発症7-14日後であることが確認された。このタイミングに、中大脳動脈を閉塞し、動脈新生によりどの程度の急性脳梗塞に対する保護効果が得られるかを検討する。平成23年度に行った解析で得られたデータを元に、動脈新生部位と梗塞巣の関係を組織学的、及びNanoSPECT/CTでの血流データと共に比較することで、より詳細な保護効果が解析できる。さらに、実際に脳梗塞になった場合の動脈における新生細胞の増殖/分化能の変化を解析する。2.bFGF持続投与による治療効果の検討脳梗塞を含め、脳では動脈新生を促進させる治療戦略はいままで殆ど開発されていなかった。一方、下肢閉塞性動脈硬化症では細胞治療、成長因子による治療など様々な治療法が開発され、実際に臨床治験でも大きな成果を挙げている。特に、近年丸井らにより報告されたbFGF持続投与法に関しては [Marui A et al., Circ J 2007;71:1181-86]、自家骨髄単核球移植と同等以上の側副血行路発達効果を示すことが明らかとなっており、骨髄穿刺などの侵襲的方法が必要なく臨床応用へのハードルは低い。この治療法は狭窄血管周辺に選択的に持続投与が可能であるため、脳血管新生治療法としても用いることが可能であり、本研究では特にbFGF持続投与法のげっ歯類脳虚血モデルに対する治療効果を確認する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、主にin vivo動物用SPECT/CT高解像度イメージングシステムであるNanoSPECT/CT撮像時に必要なアイソトープで多くの支出が見込まれる。さらに、平成23年度の検討結果で認められた、脳血管内皮細胞、平滑筋細胞の増殖因子であるFGF-2を購入しモデル動物に投与する。また、モデル動物作成のためのマウス、ラットの購入、組織評価用の試薬、抗体などの支出が見込まれる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Proliferating immature Schwann cells contribute to nerve regeneration after ischemic peripheral nerve injury2012

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi M, Ishibashi S, Tomimitsu M, Yokota T, Mizusawa H
    • 雑誌名

      J Neuropathol Exp Neurol

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transplantation of human neural stem/progenitor cells overexpressing galectin-1 improves functional recovery from focal brain ischemia in the Mongolian gerbil2011

    • 著者名/発表者名
      Yamane J, Ishibashi S, Sakaguchi M, Kuroiwa T, Kanemura Y, Nakamura M, Miyoshi H, Sawamoto K, Toyama Y, Mizusawa H, Okano H
    • 雑誌名

      Mol Brain

      巻: 27 ページ: 35-42

    • DOI

      10.1186/1756-6606-4-35

    • 査読あり
  • [学会発表] マウス慢性脳低灌流モデルにおける軟膜動脈の血管内皮細胞分裂能の検討2011

    • 著者名/発表者名
      石橋哲, 小林正樹, 水澤英洋
    • 学会等名
      第52回日本神経学会学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011年5月19日
  • [備考]

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/med/nuro/study.html

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公開日: 2013-07-10  

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