研究課題
ポリグルタミン(polyQ)病は,原因遺伝子内のCAGリピートの異常伸長により生じる遺伝性神経変性疾患であり,有効な病態抑止療法は未だない.PolyQ病では,異常伸長polyQ鎖を持つ変異蛋白が自己重合して凝集体を形成するが,その中間体である可溶性重合体に強い細胞障害性があることが多くの基礎研究で示されている.本研究では,polyQ病変異蛋白の重合体形成を阻害する新規薬剤の開発を目的とし,以下のことを実施し た.(1) Protein fragment complementation assay法を用いて,培養細胞内でpolyQ病変異蛋白の重合体形成を蛍光値として検出できる培養細胞系を樹立した.本細胞系を用いて薬剤の重合体形成阻害効果を調べた.その結果,~50 の化合物において50%以上の重合体形成阻害効果を認めた.(2) polyQ病変異蛋白を発現するモデル線虫を用いて,培養細胞系において効果を示した候補薬剤の有効性を調べた.その結果,17-AAGを含む4種の薬剤において,TG線虫の封入体数の減少,運動能の改善,寿命延長効果を認めた.また,生化学的に検出される重合体量の減少を認めた.(3) 2例の患者および2例の健常者由来の線維芽細胞からiPS細胞の樹立を試み,現在樹立中である.脊髄小脳変性症における臨床試験が成功しない最大の要因の一つが,小脳失調の定量的評価法がないことにある.本研究では,小脳失調の定量的評価法を開発することを目的に,iOS上で作動する検査プログラムを独自開発した.半定量的評価尺度であるSARAや他の臨床項目との比較,経時的変化から,本検査法で得られる「等速反復運動における速度の変動係数」がSARAと高い相関性を示すばかりでなく,データの安定性,鋭敏性が高いこと,評価者内・評価者間誤差が小さいこと,さらに検査の簡便性,機動性が高いことを明らかにした.
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Acta Neuropathol
巻: 124 ページ: 749-760