研究課題/領域番号 |
23790985
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
井川 正道 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (60444212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / PET / 脳機能イメージング / パーキンソン病 / ミトコンドリア病 |
研究概要 |
1. パーキンソン病(PD)患者生体脳における酸化ストレスイメージングとして,62Cu-ATSMによるPETを用いた検討を行った.PD患者15名(男性7名,女性8名,平均72.2 ± 9.4歳)および正常対照(NC)者6名(全員男性,平均34.7 ± 9.0歳)を対象とし,62Cu-ATSM PETスキャンを行い,各被験者における線条体への集積度standardized uptake value(SUV)を産出した.その結果,両側線条体への集積の平均は,PD群(1.15±0.10)でNC群(1.08±0.02)より有意に高値であった(P<0.05).PD群においては,両側線条体への集積とUPDRS総点数との間に,有意な正の相関が認められた(r=0.52, P<0.05).以上より,62Cu-ATSM PETイメージングによって,PD患者における線条体の酸化ストレスの増加が明らかとなり,PDにおける黒質線条体系の神経変性に,酸化ストレスが関与することが示された.2. 脳神経疾患における酸化ストレスに関する研究として,ミトコンドリア病患者における血液中の酸化ストレスの検討を行った.ミトコンドリア病の原因となるミトコンドリア遺伝子A3243G変異を有する患者14名と,健常者34名に対し採血を行い,d-ROMsによる酸化ストレスと,BAPによる抗酸化力の測定を行った.その結果,d-ROMsは,健常者群に比べて患者群で有意に増加していた(P<0.005).とくに,ミトコンドリア病の中でもMELASと呼ばれる病型の患者群(10名)では,d-ROMs,BAPとも健常者群に比べて増加していた(P<0.01).以上より,ミトコンドリア病患者は,常に酸化ストレスに晒されていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病患者に対しての62Cu-ATSM PETを用いた酸化ストレスイメージングによる検討を行い,62Cu-ATSM PETの病態評価への有用性を明らかにできた.また,関連疾患としてのミトコンドリア病患者における酸化ストレスの検討も行い,ミトコンドリア機能障害下における酸化ストレスの増大を明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,パーキンソン病だけでなく,同様にミトコンドリア機能障害の関与が想定されている,多系統萎縮症や筋萎縮性側索硬化症などでの検討を行うとともに,同一患者に対して再度62Cu-ATSM PETを行い,酸化ストレスと神経変性との経時的な変化・相関, および抗酸化薬が酸化ストレス・神経変性に与える効果を明らかにする予定である.また,モデル動物を作製し, 64Cu-ATSM 集積と酸化的損傷・神経変性との組織学的分布の相関, および抗酸化薬投与による治療効果を検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き,上記のような検討を行うために,PET 検査を施行するにあたっての核種合成用薬剤やプラスチック器具類, 実験動物および実験動物に対するオートラジオグラフィーや組織学的検査に要する薬剤,検査結果を保存するためのディスク類の購入に研究費を使用する予定である.また,被験者となった患者・正常対照者への謝金,調査・研究・研究成果発表のための旅費にも研究費を使用する予定である.
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