研究課題/領域番号 |
23790986
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 晴彦 名古屋大学, 高等研究院(医), 特任助教 (40594057)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 球脊髄性筋萎縮症 / バイオマーカー / プロテオミクス |
研究概要 |
我々は神経変性疾患である球脊髄性筋萎縮症(SBMA)に対するリュープロレリン酢酸塩の臨床試験を行い、抗アンドロゲン療法の有効性を立証しつつある。本研究では病態抑止療法の確立を目指し、治療に反応する患者群を早期に捉えるために、SBMAの治療反応性を規定する血漿バイオマーカーを探索する。具体的には、(1)患者血漿を用いてSBMAの重症度に関与する分子をプロテオーム解析により同定する、(2)同定された分子からリュープロレリン酢酸塩による治療反応性に関与する分子を抽出する、(3)得られたバイオマーカーを用いて治療に反応する患者群を早期に捉えることで病態抑止療法の確立を目指す。これまで、SBMA患者に対する第II・III相試験の結果、病態の根本と考えられている変異アンドロゲン受容体の集積がリュープロレリン酢酸塩によって低下することが確認された。さらに罹病期間の短い患者群で嚥下機能に有意な改善が認められた。本治療法が病態に基づく根本的な標準的治療法になるよう、我々は平成23年度に新規医師主導治験を開始した。本研究では患者血漿・尿の使用に関わる体制整備を進め、治験のサブスタディとして同意が得られたSBMA患者を対象に血清検体の収集を開始した。また、SBMA血清検体を対象にプロテオーム解析を開始した。血清検体を対象にしたLC-MS/MSによる解析はアルブミン・IgG除去キットを用いて安定して行うことができるようになった。今後は疾患特異的で臨床的に意味のあるバイオマーカー候補をいかにして多数の候補の中から抽出するかが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度において、我々は球脊髄性筋萎縮症(SBMA)に対するリュープロレリン酢酸塩の新規医師主導治験を開始した。本研究では患者血漿・尿の使用に関わる体制整備を進め、治験のサブスタディとして同意が得られたSBMA患者を対象に血清検体の収集を開始した。さらに、SBMA血清検体を対象にプロテオーム解析を開始することができた。血清検体を対象にしたLC-MS/MSによる解析はアルブミン・IgG除去キットを用いて安定して行うことができるようになった。今後は疾患特異的で臨床的に意味のあるバイオマーカー候補をいかにして多数の候補の中から抽出するかが課題である。当研究室においてはSBMAトランスジェニックマウスを用いてDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行っており、既に、SBMAの病態関連遺伝子としてCGRP1 (Calcitonin gene-related peptide)を同定している。CGRPは37アミノ酸からなる血管拡張に働くニューロペプチドであり、ヒトの病変組織である腰髄前角ニューロンにおいてコントロールに比し明らかに多く存在することが免疫染色により確認されている。今後は、SBMA患者血漿・尿におけるCGRPの濃度を検討し、臨床的重症度指標との関連を探索することでバイオマーカーとしての有用性を評価したい。なお、CGRPはRIAを用いて血漿における濃度を安定して測定できることが既に報告されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、SBMA患者を対象に血清検体の収集を継続し、SBMA血清検体を対象にプロテオーム解析を行っていく。網羅的なプロテオーム解析によって候補分子が明らかにならない状況であっても、SBMAの関連分子として同定されているCGRPのSBMA患者血漿における濃度を検討し、臨床的重症度指標と比較検討することでバイオマーカーとしての有用性、信頼性を評価する。当研究室においてはSBMAトランスジェニックマウスを用いてDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行っており、既に、SBMAの病態関連遺伝子としてCGRP1 (Calcitonin gene-related peptide)を同定している。CGRPは37アミノ酸からなる血管拡張に働くニューロペプチドであり、ヒトの病変組織である腰髄前角ニューロンにおいてコントロールに比し明らかに多く存在することが免疫染色により確認されている。平成24年度においては、SBMA患者血漿・尿におけるCGRPの濃度を検討し、臨床的重症度指標との関連を探索することでバイオマーカーとしての有用性を評価したい。なお、CGRPはRIAを用いて血漿における濃度を安定して測定できることが既に報告されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においても、平成23年度に引き続き、SBMAにおけるバイオマーカー探索を行っていく。SBMA患者を対象に血清検体の収集を継続し、SBMA血清検体を対象にプロテオーム解析を続けていくため、プロテオーム解析に関わる試薬購入が必要となる。また、SBMAの関連分子として既に同定されているCGRPのSBMA患者血漿における濃度に関し、RIAを用いて測定する費用として研究費を使用する予定である。前述の過程で同定されたバイオマーカーは候補にすぎず、臨床的に実効性のあるバイオマーカーとして認められるためには、多数の臨床材料によって検証されなければならない。上記のプロテオーム解析で得られた候補タンパク(SBMAの新たなバイオマーカー候補)について、SBMA患者の剖検組織を用いて免疫染色を行い局在を明らかにするため、免疫染色試薬の購入、さらに臨床情報との相関について検討するための統計解析ソフト購入にも使用する予定である。
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