研究概要 |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は遺伝性の神経変性疾患であり、全身の筋力低下を主症状とする。根本的治療は存在せず、現在治療法開発が進められている。SBMAは緩徐進行性のため長期間の臨床試験が必要であることが問題になっており、治療効果を予測するバイオマーカー(生物学的指標)の開発が重要である。本研究ではバイオマーカーとなりうる蛋白について患者尿、血液を対象に検索した。 我々は平成23年度に新規医師主導治験を開始した。本研究では患者血漿・尿の使用に関わる体制整備を進め、治験のサブスタディとして同意が得られたSBMA患者を対象に血清検体の収集を開始した。新規医師主導治験は名古屋大学を含む全国5施設(名古屋大学、自治医科大学、千葉大学、東京大学、東京医科歯科大学)で行われ、100例強の被験者の登録を得ることができた。治験のサブスタディは名古屋大学単独で行い、患者血漿、尿の集積を進めるとともに、運動機能スケール、嚥下機能、舌圧等の評価項目を同時に計測し、今後のバイオマーカー探索が容易になるように施行した。 本研究に並行して我々のグループでは尿中の酸化ストレスマーカーである8OHdGが、SBMAにおいて重症度を反映するバイオマーカーである可能性について明らかにした(Mano et al. Muscle and Nerve, 2012)。また、SBMA34 例を3年間前向きにフォローした結果から、血中クレアチニン(Cr)が運動機能の重症度を反映するマーカーとして有用であることが判明した(Hashizume et al. Brain, 2012)。
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