研究概要 |
免疫介在性ニューロパチーにおける治療抵抗性や難治化には軸索障害の関与が指摘されている。本研究は難治性症例に対する治療標的の探索と軸索脆弱性メカニズムの解明を目指した。 本年度はtransient axoglial glycoprotein-1 (TAG-1) 欠損マウスに実験的自己免疫性神経炎 (experimental autoimmune neuritis, EAN) を誘導し、野生型と比較解析を行った。なおTAG-1は軸索-髄鞘間相互作用への関与と、一塩基多型に対応するアミノ酸置換によりIVIg治療反応性への相関、さらに再髄鞘化障害や軸索脆弱性への関与が推定される分子である。人為的な神経炎誘導は、FCA等による賦活下に髄鞘構成成分であるP0ペプチド投与により行った。評価はrotarod analysis, cage activity等による運動機能、sciatic nerveの電気生理学的検査と同部位の病理(形態ならびに免疫組織学的解析)に拠った。 その結果、TAG-1ノックアウト個体の出生比率は理論値より顕著に低く、出生後の体格異常や奇形はないものの野生型と比較して昭かな低体重化傾向を示した。またEAN誘導TAG-1 KOはrotarod (post-EAN, WT:127.2 sec, TAG-1 KO: 33.9 sec), cage activity (post-EAN, WT: 4,709/12h, TAG-1 KO: 3,269/12h), foot print analysisによるすべての解析で野生型より高度の運動障害とclinical scoreの重症化を示した。 以上より軸索-髄鞘間相互作用の破綻が脱髄に伴う軸索脆弱性に関与するとともに、免疫介在性ニューロパチーの難治化の主因かつ治療標的となり得る可能性が強く示唆された。
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