研究課題
脊髄特異的ターゲッティングペプチドの同定およびモデル動物への治療検討前年度同定した脊髄組織全体に対する標的アミノ酸配列Aおよび配列B(7アミノ酸+両端にシステイン残基)を外部委託にて合成依頼。そのC端側に9つのアルギニンを付加し、N端には標識のためにFITCラベルとした。配列AまたはBを含むペプチドのみを尾静脈より注射し、脊髄組織での局在の検討を行った。結果として、合成ペプチドは、いずれも脊髄全体へと分布しており、脊髄組織内の細胞単位というよりは、組織としての標的化に応用できると考えられた。そこで、我々は、筋萎縮性側索硬化症のモデル動物であるSOD1(G93A)マウスにて、異常SOD1の発現を抑制することによる遺伝子治療を試みることとした。現在までに、SOD1蛋白のノックダウン効果が報告されているsiRNA-SOD1のオリゴを外部委託により合成。そのオリゴとペプチドを結合させ、SOD1(G93A)マウスに投与を開始し、現在、行動実験や生存曲線を検討中である。脊髄神経細胞特異的ターゲッティングペプチドの同定前年度、脊髄内の神経細胞特異的に結合するファージの回収がレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)後では困難(ファージが死滅するため)であったため、LCM後の組織より、DNA(ファージDNAが含まれる)を抽出。そのDNAを鋳型に、ファージDNAのランダムアミノ酸配列両端のプライマーを用いてPCRを施行し、TAクローニングベクターに挿入した。ランダムに増幅されたと考えられるアミノ酸配列をコードするDNA断片がそれぞれ単一クローン化されており、それらを1つずつシークエンスし、候補となる配列の同定を行った。結果として、候補となる配列N1およびN2を同定した。今後、この配列のペプチド合成を委託し、脊髄神経細胞への親和性を検討し、治療へ応用の可否を判断する。
3: やや遅れている
脊髄全体に特異性のあるペプチド候補は同定でき、オリゴとの結合体による動物実験への移行も達成できている。だが、まだ準備実験の段階であり、投与量、投与回数などを調整していく必要があると考え、最終的に効果的な方法を構築するのに、まだ時間を要すると考えているが、25年度内にある程度の結論は出せると考えている。前角細胞のみを標識するペプチドは代替方策にて、研究を推進させることができ、候補配列の同定まで達成できた。今後、標的化の確認が必要であるが、順調に進行すれば、最終目標であるモデル動物への移行まで十分可能な範囲にあると考える。ただ、昨年度にやや遅れた影響で、そのままやや遅れた状態で推移していると考え(今年度はほぼ予定通り進行した)、最終的には遺伝子治療法の構築までの達成はもう少し時間を要する可能性がある。
当初は細胞特異的な遺伝子治療のみを目標としていたが、脊髄全体に特異性のあるペプチド候補が先立って同定でき、脊髄組織全体への遺伝子治療へと広がりを持たせた結果、目標であったモデル動物の遺伝子治療への応用が推進できていると考える。25年度は、容量調整、投与回数などを検討し、その結果として治療有用性に対する何らかの結論はでると判断している。しかし、前角細胞への標的化については、まだ候補配列の確認段階であり、モデル動物の遺伝子治療まで到達することは時間的にも困難である可能性があるため、神経細胞への標的化がモデル動物で可能であるか否かの実験を優先させ、少なくとも標的化の面で、ある程度の結論に至ることを最優先させる方針とした。順調な進行状況であれば、次のステップである遺伝子治療への移行を推進することとする。
現在までのペプチド以外に、新たに神経細胞特異的ペプチド候補(N1,N2)の合成委託およびノックダウンオリゴの合成委託への費用、SOD1(G93A)マウスの繁殖および飼育への費用、ペプチド投与後のマウスでの組織学的検討、生化学的検討のためのスライド類、試薬類、フィルム、SOD1抗体やマーカー染色などの各種抗体などが、25年度の研究費の使用予定であり、すべて物品費(消耗品費用)として研究費を使用する予定である。
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Nature Communications
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