研究課題
本研究の目的は、アルツハイマー型認知症(AD)の髄液・血液由来の糖タンパク(トランスフェリンと免疫関連タンパク2種)の糖鎖異常を測定する系を確立し、有効性を検討することである。本年度は、糖鎖解析のためにイオン交換クロマトグラフィーで各タンパクを精製することを目標としていたが、技術的な問題から達成できなかった。そのため、タンパクの精製と並行してトランスフェリンのレクチン結合量(糖鎖量)が変化する機序の解析を行っていたが、血液中トランスフェリンのシアル酸量の減少はシアル酸を付加する酵素であるα-2,6シアリルトランスフェラーゼ(STase)の血清中分泌型STase量とその活性を測定したところ、いずれもADの血液中で減少していることが分かった。このことから、トランスフェリンのシアル酸量が減少していることを支持するデータを得ることができ、シアル酸量の変化に着目する本研究の意義も確認できた。次年度は、糖鎖解析のための糖タンパク精製を進めるとともに、髄液中・血液中でのSTaseの動態も併せて解析する予定である。
3: やや遅れている
糖鎖解析のための糖タンパク精製の進行が遅れている。イオン交換クロマトグラフィーによって精製する予定であったが、技術的な問題のためか、精製に至っていない。精製が順調に進まなかったため、本研究目的達成にも重要である糖鎖異常の機序の解析を行ったところ、トランスフェリンの糖鎖量減少の原因がシアル酸を付加する酵素の異常(活性と量の低下)であることが分かり、今後の方向性としてトランスフェリンの糖鎖異常検出はシアル酸に着目する意義の裏付けが取れたことは本年度の成果である。
まずは、イオン交換クロマトグラフィーにより2種の糖タンパクを精製することを第一の目標とし、その後精製した糖タンパクから糖鎖を切り出し、LC-MSにより糖鎖構造の解析を行う。また、本年度糖鎖異常の原因の1つがシアル酸を付加する酵素の異常であることが示唆されたため、さらに髄液中・血液中のSTase量、活性を測定してトランスフェリンシアル酸量との関連や解析した糖鎖の異常部位との関連の解析、髄液と血液との関連の解析を行う予定である。
該当なし
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