研究課題/領域番号 |
23790991
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
出口 健太郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (80467753)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ゼラチン多孔体 / 軸索伸長阻害因子 / 軸索伸長促進因子 / 脳梗塞 |
研究概要 |
脳梗塞では、急性期を過ぎるとその病巣部において多くの細胞が壊死に陥り、非可逆的な機能障害を残すため、慢性期の脳梗塞治療では、組織再構築の見地からの検討が求められる。そのためには組織を構築するための細胞、足場、栄養因子の供給が必要となる。これまでの検討で、多孔質生体材料であるゼラチン-GPSMを脳損傷部位に埋入した際に、孔内にアストロサイト、血管内皮、ミクログリアによる新生組織の形成を確認したが、神経細胞は認められず、軸索伸長も限られていた。脳梗塞病変周囲に発現する軸索伸長関連因子の関与が考えられたため、今回、ラット脳梗塞モデルにおいて、tPAならびにedaravone投与も含めてその因子の発現について検索した。脳梗塞発症4日後に軸索伸長関連因子であるneurocan、semaphoring 3A、Nogo receptor、GAP43、DCCの発現を免疫染色とウエスタンブロットで検討し、edaravone投与群において梗塞巣周囲に今回検討した全ての軸索伸長関連因子の発現の増強を認め、tPA群で低下した。これらの因子は、軸索伸長阻害もしくは促進作用だけでなく、梗塞後組織修復への関与が示唆され、さらにtPAによる神経毒性ならびにedaravoneによる梗塞後脳の軸索再生の関与が推定された。ゼラチン多孔体による慢性期脳梗塞再生医療を行う上で、各種因子の発現のコントロールのタイミングをさらに検討する必要があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、多孔質生体材料であるゼラチン-GPSMを脳損傷部位に埋入した際に推定される病変周囲に発現する軸索伸長関連因子の関与について、詳細に検討をすることができた。現時点で、実際に多孔体を埋入することによる組織新生について検討ができていないので、予定通りに進んでいるとは言えないが、多孔体を埋入して新生する組織が周囲の組織と統合される可能性についてさらに検討を進めるための基礎的な知見は得られたので、おおむね順調に研究は進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、ゼラチン多孔体を脳梗塞部位の脳病変に埋入し、脳組織新生について検討する。多孔体周囲で、軸索伸長がどのように制御されるかにも注目して、主に組織学的な検討を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に、実験動物購入、組織学的な検討のための抗体購入、多孔体へ付加する各種栄養因子の購入などに使用する予定である。
|