研究課題
1) 私たちはFUS遺伝子変異を伴った家族性ALSの日本人大家系を初めて報告し、その臨床・神経病理学特徴を明らかにした (Tateishi et al, Acta Neuropathol, 2010)。FUS遺伝子のR521C遺伝子変異により核蛋白であるFUSの核への移行障害が生じ、その局在変化によって細胞質内に封入体を形成し、中枢神経系に多系統変性と神経細胞内に好塩基性封入体を伴うことを明らかにした。2) 孤発性ALS剖検例を用いた免疫組織学的検討では、血管内皮増殖因子 (VEGF)の転写因子hypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α)の染色性が細胞質では増加している一方で、核内では低下していることを見出し、HIF-1αが細胞質から核内に移行する経路に異常がある可能性を示した。この病理変化を更に解析すべく、患者剖検例と変異SOD-1(G93A)トランスジェニック(-Tg)マウスの脊髄を用いて免疫染色を施行しdensitometerで半定量解析した。この結果、変異SOD1-Tgマウスでは、コントロールマウスと比較して発症前から脊髄前角細胞の細胞質でHIF-1αの染色性が増強している一方、VEGFの染色性は低下していた。さらに前角細胞の細胞質においてHIF-1αとkaryopherinβ1 (KAB)とが共存し、KABは核膜表面でnuclear protein (Nup62)と共存していた。ALS剖検例も同様に脊髄前角細胞質でKABの染色性が低下し、核膜上ではNup62の染色性が低下していた。何れの差も、統計学に有意であった。以上から、ALSの脊髄前角細胞では、HIF-1αは細胞質から核膜までは輸送されるが、核膜から核内への移行障害が存在しており、これは臨床症状発現前に生じる早期の変性所見である可能性が新たに示唆された。
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Brain Pathology
巻: In press ページ: In press
doi: 10.1111/bpa.12040
PLoS One
臨床神経学