研究概要 |
抗MuSK抗体による重症筋無力症 (MuSK-MG) は、急激に症状が悪化したり筋萎縮に至る重症ケースが多いため、早急に治療の方針計画を立てる必要がある。しかしながら、現在の治療指針は抗AChR抗体による重症筋無力症に合わせて策定されているため、成因の全く異なるMuSK-MGの病態に必ずしも適さない可能性がある。本研究では、申請者が作製したMuSK-MGの画期的な新規動物モデル (100%の確率で同調して疾患を発症する) を用いて、MuSK-MGに対して真に有効な治療法・治療薬を探索・検討し、新たな治療指針を提言することを目的とする。 平成23年度は、MuSK-MGの新たな対症治療薬の探索を目的として、Kチャネル阻害薬の3,4-ジアミノピリジン (DAP) の効果を解析した。MuSKタンパクを免疫して重症筋無力症を発症させたマウスに3,4-DAP を投与し、反復神経刺激による筋活動電位の減衰率の変化からその有効性を評価した。その結果、減衰率の劇的な減少だけでなく、活動電位の振幅にも大幅な増加が認められたことから、3,4-DAPが筋の易疲労性を改善し、最大発揮筋力を増加させる可能性が示された。さらに、発症したマウスから横隔膜を採取し、神経筋シナプスの刺激伝達に対する3,4-DAPの効果をin vitroで直接的に評価した結果、3,4-DAPは主に、運動神経終末からアセチルコリンの放出量を増加させて神経筋シナプスの刺激伝達を改善させていることが明らかとなった。MuSK-MGの病態はポストシナプス側の感受性低下だけでなく、プレシナプス側の機能低下にも起因していると考えられているため、3,4-DAPはMuSK-MGの対症治療薬として有効である可能性が示された。
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