研究課題/領域番号 |
23791013
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小林 雅樹 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (80373041)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 膵臓 / α細胞 / グルカゴン |
研究概要 |
2型糖尿病では、インスリン分泌の障害に加えて、グルカゴン分泌抑制の障害も認められる。そこで、2型糖尿病におけるα細胞の機能障害のメカニズムを明らかにするため、インスリンシグナリングの下流に位置する転写因子FoxO1について、α細胞特異的恒常活性型FoxO1ノックインマウスの作製と、解析を実施した。恒常活性型FoxO1をloxP配列に挟まれたPGK-Neo遺伝子とともにROSA 26 genomic locusに挿入したノックインマウス[ROSA26-FoxO1 3Aマウス、中江淳博士(慶應義塾大学)からの供与]と、グルカゴン-Creトランスジェニック(TG)マウス[Pedro Herrera教授(ジュネーブ大学)からの供与]を掛け合わせて作製した。このノックインマウスはコントロールマウスに比べ、摂食時の血糖値が有意に高く、耐糖能障害を示した。自由摂食時の血漿中グルカゴン濃度については、ノックインマウスがコントロールマウスより有意に高い値を示した。一方で、血漿インスリン濃度についてはノックインマウスが高い傾向を示したものの、その差は有意でなかった。ランゲルハンス島の構造や、α細胞、β細胞の量など、形態学的な解析においては2つのマウスの間で差は認められなかった。次に、α細胞株であるαTC細胞を用いたルシフェラーゼアッセイにより、恒常活性型FoxO1がプログルカゴンプロモーターの転写活性を高めることが明らかになった。このプロモーター領域に存在するFoxO1結合予想箇所についてクロマチン免疫沈降法による解析を行ったところ、FoxO1が結合することが明らかとなった。以上の結果より、成体膵においてα細胞のFoxO1は、プログルカゴン遺伝子プロモーターに結合し、遺伝子発現の調節を介してグルカゴンの調節に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α細胞特異的恒常的活性型FoxO1ノックインマウスにおいて、血漿グルカゴンの増加を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
α細胞を蛍光タンパク質で標識するため、α細胞特異的FoxO1遺伝子改変マウスに、Rosa26-eGFPマウス(Jackson Labから購入済)を交配させている。このマウスより、膵ラ氏島を単離した後、GFP標識されたα細胞をセルソーター(BD FACSAria II Cell Sorter、ベクトン・ディッキンソン社製)により分離、回収する。回収したα細胞を用いて、ブドウ糖、アルギニン、インスリンなどの細胞刺激に対するグルカゴンの分泌反応を検討し、さらにα細胞機能に関連した分子の発現レベルの変化を定量RT-PCRやウエスタンブロットにより解析する。同時に、膵α細胞特異的FoxO1ノックアウトマウスを、ROSA26-FoxO1 3Aマウスの代わりに、FoxO1 floxマウスをグルカゴン-Cre TGマウスと交配させて作製しており、このノックアウトマウスについての解析も実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
セルソーターによる細胞回収の関連試薬(シース液等)、細胞培養関連試薬(培地、血清等)、定量RT-PCR関連試薬(酵素等)、ウェスタンブロット関連試薬(抗体、発色試薬等)、その他消耗品(プラスティックチューブ、ディッシュ等)の購入を中心に使用する。
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