研究課題/領域番号 |
23791014
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中倉 敬 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (60568658)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | インスリン / pH / プロトン / 糖代謝 / OGR1ファミリー / GPCR |
研究概要 |
インスリンは膵臓ランゲルハンス島のb細胞で生合成され、血中グルコースの上昇に反応して血中に分泌されることで血糖値の低下を促す唯一のホルモンであり、インスリン分泌はさまざまなGPCRを介したシグナルにより増強される。一方でOGR1、TDAG8、GPR4、G2AからなるOGR1ファミリーは、リゾ脂質に加えて細胞外pHの低下を感知するユニークな受容体群であることが明らかとなった。インスリンはpHの低下に応じてその分泌が増大することが報告されているが、その分子メカニズムは不明であった。 このため、本研究ではOGR1ファミリーのいずれかがインスリン分泌調節に関与している可能性を想定し、これまでにOGR1ファミリー欠損マウスに対して腹腔糖負荷試験やインスリン感受性試験を行い、個体レベルでインスリン分泌への影響を調べてきた。加えて、単離膵ラ氏島を用いて低pH下やリゾ脂質存在下におけるグルコース応答性インスリン分泌についての解析を行った。 この結果、OGR1欠損マウスで顕著に糖負荷後の血中インスリン濃度の低下が観察されており、またインスリン感受性の行進も見られたことから、OGR1が糖代謝に需要な役割を担っている可能性が示唆された。加えて単離ラ氏島を用いた解析から、OGR1欠損単離膵島で顕著なグルコース応答性インスリン分泌能の低下がみられるとともに、低pH下でのインスリン分泌の促進も有意に抑制されていた。一方で、リゾ脂質によるインスリン分泌の増進は観察されなかった。 以上のことから、OGR1がインスリン分泌調節に対して重要な機能を担っている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に研究は進んでいる。しかしながら、単離膵ラ氏島を用いた解析については当初の計画に比べて遅れているため、解析を重点的に進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
正常状態のマウスに対するin vivo解析はほぼ終了しており、次年度は高脂肪食を付加するなどして糖尿病モデルマウスの作成と解析を進める。一方で、単離ラ氏島を用いた解析については今年度の計画に遅れが出ているため、重点的に解析を進める。特に、従来よく知られるGPCRアゴニストを用いることで、OGR1欠損によるインスリン分泌の特異性の解析を行うとともに、シグナル伝達経路の解析を行うために阻害剤を用いた解析を行う必要がある。また、OGR1 siRNAや過剰発現用のアデノウイルスを用いて単離ラ氏島におけるOGR1のインスリン分泌能について実験的に解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度では単離ラ氏島を用いたインスリン分泌解析が中心となることから、研究費は主にインスリン測定キット(ELISAやRIA)、培養用試薬類の購入に充てる。また、アゴニストや阻害剤の購入も計画している。受容体欠損マウスの解析にはPCRを行う必要があり、分子生物学用酵素試薬類の購入やタンパク質測定キットの購入も計画している。実験用マウスの購入も予定している。これらの研究で得られた実験成果を学会で発表するための旅費等にも使用する。
|