研究概要 |
本研究では脂肪細胞分化におけるヒストン修飾を中心としたエピジェネティックな転写制御の役割を検討した。各種細胞の脂肪細胞分化・他系統分化・分化刺激におけるPPARγプロモーターにおけるbivalent修飾(H3K4me3+, K27me3+)の変化のChIP(クロマチン免疫沈降法)による検討では、発生初期段階におけるマウスES細胞、マウス胎児線維芽細胞のPPARγ1のプロモーターにおいてH3K4me3陽性,H3K27me3陽性のbivalent markを認めた。胎児線維芽細胞の脂肪細胞分化に伴って、PPARγ1の転写が増加するのと同時期に、転写促進型ヒストン修飾であるH3K4me3は変化しないのに対し、抑制型ヒストン修飾であるH3K27me3が減少する事を明らかにした。一方、マウスの白色脂肪組織では脂肪細胞にはbivalent markが認められないのに対し、間質に存在する前駆脂肪細胞を多く含むSca1(+)lin(-)画分におけるにおいてbivalent修飾が認められ、in vivoにおける幹細胞状態においても重要である可能性が示唆された。またbivalent修飾に関わるヒストン修飾酵素のノックダウンにより脂肪細胞分化が抑制される事から、脂肪細胞の分化のポテンシャルの維持とその解除にPPARγプロモーターのエピジェネティックな制御が重要であることが示唆された。
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