近年、オーファンG蛋白共役型受容体のリガンドが内因性脂質であると相次いで報告され、その代謝調節への関与が注目されている。このうちGPR40、GPR119は、糖代謝調節や摂食制御に関与する膵臓・腸管内分泌細胞での高発現が示唆されており、新規創薬標的として期待されている。 GPR119は、オレオイルエタノールアミド(OEA)がリガンドと報告され、OEAはラットで外因性投与で摂食抑制を来すことからGPR119の臨床的意義が注目されてきた。我々は、ヒト組織でGPR119 mRNAを定量し、その生理的意義を探索した。GPR119 mRNAは膵臓で最も高濃度に発現し、胃、小腸、大腸にて発現が検出された。異なる3例にてヒト膵島で更に10倍以上に濃縮され、その濃度はヒトで膵島に高発現しインスリン分泌調節への関与が知られているGPR40に匹敵していた。また、2例の異なるインスリノーマおよびグルカゴノーマでGPR119 mRNAがいずれも検出され、その濃度はヒト膵島に匹敵していた。以上より、ヒトでのGPR119遺伝子の膵島、および食道以外の消化管での発現が証明され、膵臓のβ細胞とα細胞での発現が示唆され、膵島機能への関与の可能性が示された。 さらに、遺伝性肥満コレツキーラット膵島においてGPR119遺伝子発現が低下していることを申請者らは確認した。4週間のカロリー制限にてコレツキーラット膵島でのGPR119遺伝子発現は非肥満対照に匹敵する濃度に改善することが確認され、GPR119の肥満におけるインスリン分泌調節への関与が示唆される。 本研究により、GPR119の生理的、病態生理的意義の一端が明らかとなった。今後、膵島・消化管内分泌細胞からのホルモン(内因性シグナル)による糖代謝調節・摂食制御がますます注目されるものと考えられ、GPR119の寄与の解明が期待される。
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