研究課題
1脂肪萎縮症患者からの疾患特異的iPS細胞の樹立 疾患特異的iPS細胞の作製は京都大学iPS細胞研究センターとの共同研究により脂肪萎縮症患者から皮膚組織を採取しOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4因子のレトロウイルスを用いて遺伝子導入行うことでiPS細胞の樹立を行った。先天性脂肪萎縮症患者4例と後天性脂肪萎縮症患者1例と部分性脂肪萎縮症患者1例から皮膚繊維芽細胞を採取し、ヒトiPS細胞を樹立した。ヒトiPS細胞としての未分化能及び多分化能の検証や核型が正常であることを確認した。2in vitro脂肪細胞分化誘導系を用いた脂肪萎縮症の成因・病態の解明現在、SEIPIN遺伝子異常を有する2症例からのiPS細胞に関して脂肪蓄積、遺伝子発現等の解析を主に進めている。3ヒトiPS細胞由来脂肪細胞の分化および移植に関する検討ヒトiPS細胞由来脂肪細胞のvivoでの機能解析や脂肪萎縮症に対する細胞治療の実現のためにはヒトiPS由来脂肪細胞の移植システムの開発が必須である。申請者らは自身らが開発したヒトiPS細胞からの脂肪細胞分化誘導法を用いて、ヒトiPS細胞由来脂肪細胞をヌードマウス皮下に移植を行い、組織学的解析と遺伝子発現解析から少なくとも4週間は生着しうることを確認した(投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
概ね計画通りであるが、一部の疾患に関してはiPS細胞の樹立効率が悪い等の問題がある。現在、ヒトiPS細胞としての基準を満たしていることを確認するために未分化能と多能性等に関して慎重に解析を進めている。今後は従来の4因子をレトロウイルスで導入する方法と異なる樹立法での検討も考慮している。樹立済の疾患iPS細胞は脂肪細胞の分化と機能に関する解析を進めている。また効率的で安全な脂肪細胞分化誘導法の開発についてはすでに検討を始めている。
1効率的で安全な脂肪細胞分化誘導法の開発安全な細胞治療の実現や安定した脂肪細胞機能解析のためには分化誘導刺激後の残存する未分化細胞の除去と前駆脂肪細胞の単離などのプロセスが必要となる。発生学的には脂肪細胞は中胚葉・間葉系の細胞であり、その由来は沿軸中胚葉と考えられている。Flk1-,PDGFRα+の細胞集団はマウスES細胞においては沿軸中胚葉系由来細胞であることが示されており研究実績のある京都大学iPSセンター桜井講師との連携によりヒトiPS細胞においてFlk1-,PDGFRα+の細胞集団からの脂肪細胞分化を行う。その他、ヒト間葉系幹細胞、及びヒト脂肪組織由来幹細胞のマーカーを網羅的に検索し効率的な脂肪細胞分化誘導法の開発を行う。またケミカルライブラリーを用いた脂肪細胞分化誘導促進物質のスクリーニングを行い効率的な分化誘導系の構築を目指す。2脂肪萎縮症ヌードマウスに対するヒトiPS細胞由来脂肪細胞を用いた細胞治療申請者らは脂肪萎縮症マウスで体重の4%以下の脂肪組織移植によりインスリン抵抗性、糖代謝異常、脂肪肝が著明に改善することを確認した。脂肪萎縮症ヌードマウスは全身性脂肪萎縮症と同様に高血糖、インスリン抵抗性、高中性脂肪血症、脂肪肝を呈する。iPS細胞由来脂肪細胞を脂肪萎縮症ヌードマウスに移植し病態改善効果を検討する。
本研究課題は既存の研究設備で十分に遂行可能である。そのため分子生物学実験試薬、測定用試薬等の消耗品及びマウス飼育のための経費のみが必要である。
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