研究課題/領域番号 |
23791035
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
久留 和成 佐賀大学, 医学部, 助教 (00592081)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 中枢神経 / 代謝学 / 糖尿病 / 肥満 |
研究概要 |
glucagon-like peptide 1 (GLP-1)分泌細胞と脳幹に存在する他の神経細胞(アドレナリン作動性神経細胞およびコリン作動性神経細胞)との共局在性を免疫組織化学染色法にて観察し、アドレナリン作動性神経細胞およびコリン作動性神経細胞とGLP-1分泌細胞との間に共局在性のないことを明らかにした。これによりGLP-1分泌細胞がこれまで報告のある上記2種の神経細胞と異なるシグナル伝達経路を用いている可能性が示唆された。 GLP-1の前駆物質であるpreproglucagon(PPG)産生細胞に対し、特異的にYFP蛍光タンパク質発現する遺伝子改変マウス(以下TGマウスと略す)から、脳スライス標本を作製し、その脳スライス標本中のYFP蛍光陽性細胞のみから細胞質を吸引し、単一細胞RT-PCR法を用いて、遺伝子レベルでYFP蛍光陽性細胞のPPG遺伝子発現を確認した。すべてのYFP蛍光陽性細胞にてPPG遺伝子の発現が確認され、本TGマウスにおけるYFP蛍光陽性細胞はGLP-1分泌細胞であることが示唆され、YFP陽性細胞から得られるデータをGLP-1分泌神経細胞のデータとし使用することが可能となった。 スライスパッチクランプ法にてGLP-1分泌神経細胞の静止時における電気生理学的特性の解析を行った。GLP-1分泌神経細胞は静止時において活動電位を有し、興奮性および抑制性のシナプス入力を有していることを明らかにした。しかしながら、静止時におけるYFP陰性細胞との電気的生理学的特性において有意な差は認められず、電気的生理学的特性によってGLP-1分泌神経細胞を同定することは困難であることが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より多少の遅れを生じている実験系もあるが、一方、他の実験系にて実験計画以上の結果も得られており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究の実験計画に従い、GLP-1分泌神経細胞がGLP-1そのものにて、修飾を受けているのか、否かについてGLP-1分泌神経細胞にGLP-1を投与し神経応答に対する電気生理学的解析を行う。また脳スライス標本中に残存する迷走神経終末に対して電気刺激を行い、末梢臓器由来のシナプス入力がGLP-1分泌神経細胞に入力しているか、否かについて電気生理学的に解析する。 中枢神経における食欲調節因子(例えばレプチン、グレリン 等)を投与し、いずれの物質にてGLP-1分泌神経細胞が神経応答を引き起こすのか電気生理学的に解析し、GLP-1の引き起こす食欲抑制作用がどのような食欲調節因子と関連性を有しているの明らかにする。 中枢神経系におけるGLP-1分泌機序と腸管におけるGLP-1分泌機序の比較を行うため、GLP-1分泌神経細胞のグルコース濃度変化に対する神経応答をスライスパッチクランプ法にて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請研究の研究費使用計画に従い、研究費のおよそ半額にて研究の精度および効率を向上させるため、気圧式ポコポンプを購入し実験行う。また残りの半額に関しては、実験に用いる動物の飼育費を含む消耗品費として使用する計画である。
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