研究概要 |
cAMP-CREBシグナルは脂肪細胞分化や脂肪分解において重要な役割を果たすことが知られている。申請者らはCREB coactivator CRTC3が脂肪組織に強く発現していることを示し、CRTC3が脂肪細胞においてCREBの機能を調節することを世界で初めて確認し(Song Y, Igata M et al, Nature 468: 933-939, 2010)、CRTC3ノックアウトマウスは高脂肪食下で野生型マウスに比べ体重増加、脂肪量増加が有意に少ないという表現型を示した。ノックアウトマウスの白色脂肪組織を観察したところ、高脂肪食による細胞の肥大化は抑制されていた。申請者はCRTC3ノックアウトマウスの白色脂肪組織では脂肪細胞の分化が抑制されている可能性を推測し、CRTC3が脂肪細胞分化や肥大化を調節していること、またそのメカニズムを明らかにすることができれば、今後の肥満の予防・治療法の開発に大いに寄与できるものと考えて研究を行った。まず、マウス由来培養前駆脂肪細胞株3T3L1 細胞を用い、脂肪細胞分化過程におけるCRTC3の発現の変化をタンパク・mRNAレベルで解析したが、CRTC3の発現に変化を認めなかった。次にレンチウイルスを用いてCRTC3をノックダウンしたところ、PPARγ、C/EBPαの発現が抑制された。Oil Red O染色でも脂肪蓄積の減少が認められた。また脂肪細胞にはCRTC2も発現しているので、CRTC2においても同様の検討を行った。CRTC3と同様に分化過程で発現の変化を認めなかったが、ノックダウンにてPPARγ、C/EBPαの発現に変化を認めず、さらにOil Red O染色でも脂肪蓄積の減少を認めなかった。CRTC2とCRTC3の脂肪組織における役割について今後検討を進めていきたい。
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