本研究ではマクロファージ分化前の末梢血単球の機能に注目し、糖尿病発症機序へのNF-kB活性の関連を明らかとすることを目的とし検討を行った。 まず、組織で炎症反応を担うマクロファージにおける糖濃度による炎症反応の変化について検討した。マウス骨髄由来マクロファージを低糖濃度(5mM)、高糖濃度(25mM)培養液中で24時間培養し、LPS刺激2時間後の炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1b)のmRNA発現を測定した。低糖濃度培養に比し高糖濃度培養では炎症性サイトカインの発現が上昇した。ヒト単球細胞株であるTHP-1細胞においても、高糖濃度培養によってIL-6 mRNAの発現が有意に増加することが明らかとなった。これらの結果より、単球においても高糖濃度刺激により炎症活性が上昇することが明らかとなった。 高血糖による単球の炎症活性の検討のため、肥満・糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスおよび高脂肪食負荷C57BL6マウスを準備したが、FACSの基礎的技術の確認を終えたのみで期間中に解析には至らなかった。その理由として使用していた動物実験施設でヘ感染が確認されたことから、個体の削減、繁殖・飼育の制限が設けられ、解析に必要なマウスが維持できなかったことが要因である。 一方、高糖濃度で培養した単球、マクロファージにおいてCDK inhibitor であるp27kipのmRNA発現が増加していることを見出した。単球、マクロファージにおけるp27kip発現による増殖抑制の動脈硬化および糖尿病の発症・進展への関与を明らかとするために、スカベンジャー受容体プロモーター下にp27を配した(SRA-hp27)、マクロファージ増殖抑制マウスを作製した。現在解析に向け個体数を増やすために繁殖を行っており、今後、肥満、糖尿病の病態および動脈硬化発症・進展におけるマクロファージp27kipの役割を検討する。
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