研究課題/領域番号 |
23791039
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 俊秀 大分大学, 医学部, 准教授 (60404373)
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キーワード | IQGAP1 / Rab27a / エンドサイトーシス / 膵B細胞 / インスリン / 糖尿病 / Gタンパク質 / メンブレントラフィック |
研究概要 |
申請者は、これまで不活性型と考えられてきたGDP型Rab27aに結合する分子としてcoronin3を同定し、その結合が膵B細胞でエンドサイトーシスを制御することを示した。本研究は、申請者がGDP型Rab27a結合候補タンパク質として最近同定したIQGAP1の機能を、分子レベルで明らかにすることを目的としている。前年度は、GDP型Rab27aとIQGAP1の結合様式を生化学的手法で調べた。そこで本年度は、前年度の成果を基盤にIQGAP1の活性制御機構を検討した。 申請者が同定したGDP型Rab27a結合領域を指標に、IQGAP1の様々なフラグメントを作製し結合実験を行った。その結果、IQGAP1のC末側のコンフォメーション変化がGDP型Rab27aとの結合に影響を及ぼすことを明らかにした。コンフォメーション変化を引き起こす分子を探索した結果、GDP型Rab27aとIQGAP1の結合は、Cdc42が正にPKCが負に制御することがわかった。 以上の結果より、IQGAP1の活性制御機構が明らかになった。本研究成果は、次年度以降に行うIQGAP1によるエンドサイトーシスの制御機構を理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、GDP型Rab27aとその結合タンパク質であるIQGAP1が、インスリン顆粒膜のエンドサイトーシスを制御する分子メカニズムを、以下に従って解明する予定である。 平成23年度:GDP型Rab27aとIQGAP1の結合を評価する。 平成24年度:その結合を制御するメカニズムを解析する。 平成25年度:GDP型Rab27aと結合したIQGAP1がエンドサイトーシスに果たす役割を検討する。 本年度は、GDP型Rab27aとIQGAP1の結合を制御する具体的なメカニズムを生化学的な手法により明らかにした。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
IQGAP1がPKCによってリン酸化されたため、当初予定していたリン酸化抗体の作製を行わず、市販のリン酸化抗体を購入した。そのため、次年度使用額が生じた。当該研究費は、翌年度以降の研究費と共に、RNAiの影響を受けないリン酸化/非リン酸化IQGAP1コンストラクトの作製にあてる予定である。平成25年度は、前年度の成果を基盤にIQGAP1によるエンドサイトーシスの制御機構を検討する。 1) グルコース刺激は、coronin3を細胞膜近傍に移行させることによりインスリン顆粒膜のエンドサイトーシスを惹起する(Kimura et al. JCS,2008)。そこで、MIN6細胞をグルコースで刺激し、Rab27aやIQGAP1の細胞内局在変化をタイムラプス顕微鏡で観察する。 2) 申請者らは、IQGAP1の発現を抑えたMIN6細胞では、Rab27aやそのGDP型に結合しエンドサイトーシスを制御するcoronin3の細胞膜近傍への移行が阻止されることを見出した。そこで、Rab27aやcoronin3をノックダウンした細胞におけるIQGAP1の局在を調べることで、IQGAP1がエンドサイトーシスに必要な分子にとってどのような役割を果たすのかを検討する。 3) IQGAP1をノックダウンした細胞に、RNAiの影響を受けないようにRNA配列を修飾したIQGAP1を発現させ、Rab27aやcoronin3の細胞膜への移行がレスキューされることを示す。 4) IQGAP1やRac1/Cdc42の変異体をMIN6細胞に発現させ、coronin3やRab27aの細胞内移行に及ぼす影響を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 必要な設備は、すべて大分大学に設置されているので設備備品の申請は行わない。 2. 消耗品は、実勢価格を参考にして60万円を計上した。Rab27aとの結合を評価する際にタンパク質や抗体の精製が必要であると考え、生化学関連試薬に消耗品の40%の予算を割り当てた。一方、MIN6細胞では導入率の高い遺伝子導入試薬を用いて様々なタンパク質を発現させる必要がある点から、細胞培養の試薬と器具にそれぞれ消耗品の40%と20%の予算を割り当てた。 3. 旅費は、分子生物学会、薬理学会、糖尿病学会への出席・発表のために、旅行社の見積額を参考にして20万円を計上した。 4. 謝金は、外国語論文の校閲にあてるために、過去の実績に基づいて15万円を計上した。 5. その他は、本研究成果の論文による公表のため印刷費、投稿料を過去の実績に基づいて5万円を計上した。
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