研究概要 |
申請者は、これまで不活性型と考えられてきたGDP型Rab27aに結合する分子としてcoronin3を同定し、その結合が膵B細胞でエンドサイトーシスを制御することを示した。本研究は、申請者がGDP型Rab27a結合候補タンパク質として最近同定したIQGAP1の機能を、分子レベルで明らかにすることを目的としている。前年度は、IQGAP1の活性制御機構を明らかにした。 本年度は、GDP型Rab27aと結合したIQGAP1がエンドサイトーシスに果たす役割を検討した。GDP型Rab27aやその結合タンパク質coronin3は、グルコース刺激により細胞質から細胞膜近傍に移行し、インスリンを取り囲むインスリン顆粒膜のエンドサイトーシスを制御した。IQGAP1は、グルコース刺激の有無に関わらず細胞膜直下に局在し、そのノックダウンはGDP型Rab27aやcoronin3のグルコースに依存した細胞内局在変化を抑制した。一方、Rab27aやcoronin3のノックダウンは、IQGAP1の局在に変化を及ぼさなかった。 以上の結果より、IQGAP1はGDP型Rab27aやcoronin3などエンドサイトーシスに関わるタンパク質群を細胞膜近傍にリクルートすることで、エンドサイトーシスがおこるエリアを規定していることが明らかになった(Mol. Cell. Biol. 33, 4834-43, 2013)。本研究成果は、インスリンを取り囲むインスリン顆粒膜のリサイクリングを理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展したと考えている。
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