研究課題/領域番号 |
23791041
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
元山 宏華 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 後期研究医 (80382068)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / ワシントン州 |
研究概要 |
(1)メタボリックシンドロームおよび動脈硬化におけるマクロファージ集団形成を理解するために、モデルマウスに腹膜炎を惹起させ、どのようなマクロファージ集団が誘導されてくるのかを解析した。具体的にはモデルマウスの腹膜炎マクロファージを、M1およびM2の複数のマクロファージマーカーを用いて多重染色を行い、マルチチャンネルを備えたフローサイトメトリーにて解析を行った。モデルマウスの腹膜マクロファージは、M1およびM2両方のマクロファージサブセットが存在していることが確認できた。興味深いことにこれらのサブセットはADAMにより制御されると考えられるケモカインレセプターやサイトカインレセプターを発現しており、特徴的な性質をもつことがわかった。この内容の一部を2011年の米国糖尿病学会で発表し、意見交換を行った。また日本糖尿病学会でも意見交換を行った。(2)マウスでの解析と並行して、ヒトにおいて糖代謝異常を認める患者の末梢血単核球を採取し、単球のサブセットパターンを、マウスと同様にフローサイトメトリーを用いて解析を行った。ヒトの単球にも複数のサブセットが存在し、マウス腹膜炎モデルでみられたのと同様なケモカインマーカーを発現する単球の存在が確認できた。40例の糖代謝異常患者の解析によると、糖代謝の悪化で特異的な単球サブセットが増加していることがわかった。この単球サブセットは肥満や高血糖、動脈硬化のマーカーと相関しているようであり、2012年の米国糖尿病学会で発表し、情報交換を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度研究予定であった(1)メタボリックシンドロームに関連するモデルマウスを使ったマクロファージ集団形成の機能解析については、実験で特徴的なマクロファージ形成が確認され順調に解析が進んだ一方、肥満や糖尿病マウスにおける解析は現在進行中であり、総合して順調と考えられる。(2)マウスでの解析と並行して、ヒトにおいてメタボリックシンドローム患者の単球のサブセットの解析は、糖代謝異常の患者が予定より多く集まり、現在80例の症例検体が採取できており予想以上に進行している。患者検体採取をシステム化していることが功を奏していると考えている。(3)マクロファージの表面マーカーの制御にADAMファミリーがかかわっている可能性が示唆されているので、24年度におけるADAMノックアウトマウスによるマクロファージサブセット解析の準備を行う予定であるが、現在ADAMノックアウトの入手に困難を要しているためやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
肥満マウスにおけるマクロファージサブセット形成の解析が、まだ終わっていないので今後肥満・糖尿病モデルマウスのマクロファージサブセット解析にとりかかる予定である。平成24年度には、マクロファージ特異的ADAM17およびマクロファージ特異的ADAM10ノックアウトマウスにおける炎症性マクロファージサブセットの制御機構を解析す予定であるが、マウスの入手が現在遅れているため、平成24年度アメリカ糖尿病学会で情報交流をする際に交渉をすすめる。その間、別の角度から研究アプローチとしてADAMのマクロファージサブセット形成における働きについては、ヒト検体を用いた培養実験によりアプローチを行う。メタボリックシンドローム、糖代謝異常を有する患者の単球サブセット形成の解析は、予想以上に症例検体が採取できているため、年内200例を目標として検体をさらに採取し、メタボリックシンドローム、糖代謝異常により誘導されてくる単球サブセットと動脈硬化・インスリン抵抗性との関係を解析する。また、採取した単球を培養してADAMとADAMにより切断されたケモカインを測定し、単球サブセット形成におけるADAMの制御を研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当研究室には既にマルチレーザーのフローサイトメトリー機器が揃っているため、高価な機材購入の予定は無い。また同様にフローサイトメトリーの高価な解析ソフトも既に入手しているため購入予定はない。マクロファージサブセット解析の主な手法はフローサイトメトリーであり、蛍光色素ラベルされた抗体が、今後の研究において必要な主たる材料である。今後の研究費の大半は、マクロファージや単球をラベルするための蛍光抗体の購入に当てられる予定である。また、研究の情報を得るために米国糖尿病学会・日本糖尿病学会に参加予定である。本年の研究結果を論文化する際、論文化の為のソフトウェア・および機材の購入を予定している。
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