研究概要 |
本研究では、β細胞のPKCδ-Nixのシグナル伝達と細胞死の様式を明らかにすること、さらに、糖尿病モデルマウスのPKCδをβ細胞特異的に欠失することで、β細胞容積の回復と糖尿病の改善を目的とした。「PKCδがβ細胞死を誘導する」仮説を証明するものである。 インスリン分泌細胞であるMIN6細胞株を用いたin vitroの実験において、アデノウィルスベクターを用いたPKCδの過剰発現は、MIN6細胞死を誘導し、Nix転写活性とタンパク発現を増加させ、caspase-3を活性化することが判明した。さらに、PKCδ過剰を発現したMIN6細胞においてNixをノックダウンすると、MIN6細胞死とcaspase-3の活性化が抑制された。さらに、PKCδ過剰発現したMIN6細胞において、ミトコンドリア依存性壊死の阻害剤とcaspase-3の阻害剤にて、相加的にMIN6細胞死が抑制された。以上より、PKCδによるβ細胞死にはPKCδ依存性経路は存在することと、その細胞死にはミトコンドリア依存性壊死とアポトーシスが関与することが示唆された。 今後は「PKCδがβ細胞死を誘導する」という仮説を個体レベルで証明することを予定している。 上記の結果は、第71回 アメリカ糖尿病学会にて報告した。Fujimoto K, Sasaki T, Utsunomiya K, Dorn GW, Polonsky KS. PKCdelta induces pancreatic beta cell death in a Nix-dependent manner. 第71回 アメリカ糖尿病学会. サンディエゴ2011年 6月.
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