Glucolipotoxicityは糖脂肪毒性とも訳されるが、その定義に定まったものはない。一般的に、palmitateに代表される遊離脂肪酸(FFA)は高ブドウ糖環境下において小胞体ストレスを惹起することで、インスリン分泌細胞株(MIN6細胞)や膵島に対して毒性を示すことが知られている. 私達は、Protein Kinase C (PKC)δがMIN6細胞死を誘導することを突き止めた。そこで、上記のGlucolipotoxicityモデルにおけるPKCδのシグナル伝達を明らかにすることとした。アポトーシスと壊死を負に調節するSH-3タンパクであるNixは、Pdx1の発現量低下に伴うβ細胞死に関与するが、その上流のシグナル伝達は不明だった、大変興味深いことにPKCδはNixの上流に位置し、細胞死を誘導することをつきとめた。さらにPKCδの発現量を抑制することで、Nixに伴うβ細胞死を抑制した。上記の結果より、Glucolipotoxicityにおけるβ細胞死に対し、NixやPKCδを負に調節するこでβ細胞死を抑制できる可能性が示唆された。 現在はβ細胞特異的にPKCδを欠失したマウスを用い、糖尿病モデルマウスの耐糖能やβ細胞死の検討を行なっている。さらに今後は、NixやPKCδを調節する因子や化合物をスクリーニングし、臨床応用を目指した基礎的な検討を行う予定である。これにより、糖尿病治療におけるβ細胞死の抑制を目指した新規の治療法を検討中である。
|