【背景】Resistin like molecule βはadipokineであるResistinのisoformであり、2型糖尿病モデルマウスで発現が増加することが知られるが、主にGoblet cellから腸管に分泌されるとされてきた。今回我々は、RELMβのマクロファージ(Mφ)からの分泌を見出し、そのインスリン抵抗性への関与を検討した。 【方法・結果】ヒトNASH肝及び4週間MCD食負荷したマウス肝についてRELMβの発現を検討した。ヒトおよびマウスでの正常肝内のMφ(クッパー細胞)や血管周囲結合組織内の常在MφではRELMβ陽性細胞は極めて少数であるが、ヒトNASH肝およびMCD負荷マウス肝における線維化組織への浸潤MφではRELMβの発現を認めた。 そこで、RELMβ発現のインスリン抵抗性への関与を、RELMβKOマウスを作出して検討した。KOマウスでは対照マウスに比し糖負荷試験で血糖低値であった。また、インスリン負荷試験でも血糖低値であった。 次に、Mφ由来RELMβがインスリン抵抗性の病態に直接的作用を持つか、腹腔MφおよびMφ由来細胞系列で以下の検討を行った。初代培養したKOマウス腹腔Mφでは対照マウスMφに比してLPS投与による炎症性サイトカインの発現が著しく減弱し、WHHL(渡辺高脂血症ウサギ)血清による泡沫化も減少した。in vivoでの所見と符合しており、MφにおけるRELMβ発現は炎症、泡沫化に対して直接的に作用することが示された。 また、ヒト血中、便中RELMβの測定系を構築し、2型糖尿病教育入院患者100名で測定したが、入院中に便中RELMβの低下を認めた。 【結論】RELMβはマウスおよびヒトの活性化Mφから分泌され、Mφ自身の炎症の促進や泡沫化を促進する。肝インスリン抵抗性に関与することが示唆され、また介入マーカーとなりうることが示された。
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