研究課題/領域番号 |
23791049
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高山 賢一 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (50508075)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ncRNA / 前立腺癌 / アンドロゲン |
研究概要 |
miRNAについては前立腺癌細胞株LNCaP細胞におけるショートRNAシークエンスで得られたデータよりアンドロゲン応答性のmiRNA群を同定した。その中にはmiR-148a, 141, 99aなど過去に我々が報告したアンドロゲン応答性のmiRNAも含まれていた。またホルモン療法耐性の細胞株BicR細胞との比較から耐性獲得に関与しうるmiRNAを三つ(29a,b, 22)同定した。そこでmiRNAのdihydrotestosterone (DHT)による誘導、Bicalutamideによる誘導抑制効果についてqPCRを用いて確認した。またこれらmiRNAの過剰発現は細胞増殖を促進した。またデータベースの検索によりターゲット因子の候補も明らかとしている。BicR細胞において同定されたmiRNAは有意に発現が増加し、一方標的遺伝子は蛋白レベルで有意に抑制されていた。 ncRNAについては前立腺癌細胞株LNCaP細胞におけるCaP analysis of gene expression (CAGE)解析より得られた転写開始点とncRNAのデータベースよりアンドロゲン応答性のncRNA群を同定した。またいくつかのLong non-coding RNAはアンドロゲン(DHT処理)により誘導され、かつBicalutamideにより抑制されることをqRT-PCRにて確認した。またホルモン耐性株BicR細胞からのCAGEデータと合わせてホルモン耐性に関与している可能性があるncRNA群を絞り込んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではncRNAもしくはmiRNAの前立腺癌の進展への新たな機能を見出すのが目的である。これまでにmiRNAについては前立腺癌細胞株LNCaP細胞におけるショートRNAシークエンスで得られたデータよりアンドロゲン応答性のmiRNA群を同定し、その中でホルモン療法耐性の細胞株BicR細胞との比較から耐性獲得に関与しうるmiRNAを三つ(29a,b, 22)同定した。BicR細胞において同定されたmiRNAは有意に発現が増加し、一方標的遺伝子は蛋白レベルで有意に抑制されていた。興味深いことにmiRNA群からの標的蛋白の中にはゲノムのメチル化に関わる遺伝子が同定されている。現在までの結果により今後の解析の候補となるmiRNA群を絞り込むところまで達成されたと言える。 一方、ncRNAの同定についてはCAGE解析を利用しゲノム中のncRNAを検索することでいくつかのLong non-coding RNAはアンドロゲン応答性を有していることが見出された。しかしどのncRNAが重要であるか、ncRNAの機能が何であるかを見出すことが重要であり、今後の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、得られたmiRNA, Non-coding RNAのARによる制御機構を明らかとする。そのためにChOP-chip, ChIP-seqのデータを利用し近傍のAR結合部位を検索しARの結合をChIP assayにて確認、Luciferase assay を行いfunctionalなAR結合部位であることを示していく。また前立腺癌細胞における機能を明らかとするため発現抑制系の実験系を構築する。そのためmiRNAはanti-miRNAを用いて発現抑制を行う。一方ncRNA群についてはsiRNAを設計し発現抑制を起こす系を構築する。一方ncRNAの構造を明らかとするためプローブを設定しノーザンブロットを行う。またRACE PCRにより転写産物のCloning を行う予定である。得られたtranscriptから安定発現株の樹立を目指す。 またnon-coding RNAによる機能を解析するためRNA binding 蛋白との結合を検討する。その際siRNAによるncRNAの発現抑制がどのような細胞内の変化をもたらすかを十分に検討する必要がある。具体的にはmicroarrayによる発現解析、細胞内でのシグナル伝達系への影響などをsiRNAにより一つ一つ検討していくことになる。機能が明らかとなったnon-coding RNAについては動物実験によりin vivoでの腫瘍増殖への影響を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度では得られたmiRNA, siRNAの機能解析に必要な試薬の購入が必要である。 miRNAの解析のためにはanti-miRNA、pre-miRNAの購入が必要である。また標的蛋白の機能を解析するためsiRNAを購入する必要がある。またこれらのtrangectionに必要な試薬も購入予定である。標的蛋白については抗体の購入も必要と考えられる。 またncRNAについてはsiRNAによる機能解析を行うため網羅的なsiRNAスクリーニングを行う必要があり必要なsiRNAが10-20と推定される。 また細胞培養に必要な培養液、血清、ディッシュの購入にも使用される予定である。 またクローニングにおいてはPCRの試薬、プラスミドの増幅のためのキット購入などに使用される。
|