我々はlong non-coding RNAの一つとしてCTBP1(Carboxyl terminal binding protein 1)のantisense領域に存在するCTBP1-ASと名付けたnon-coding RNAの機能の解析を進めた。CTBP1-ASはRNA結合部位を有するエピジェネティックな制御因子との結合、それによりヒストン脱アセチル化酵素のプロモーターへの集積を誘導していることを見出した。その標的としてまずsense側の遺伝子であるCTBP1はARの転写抑制因子として機能しておりCTBP1-AS依存的に抑制を受けることでアンドロゲンシグナルの活性化をもたらした。マイクロアレイ法、ChIP-seq法によりCTBP1-ASの標的はゲノムワイドに存在していることが示され、標的には細胞周期制御因子が有意に含まれていた。さらに腫瘍増殖への効果をヌードマウスへ移植したホルモン療法抵抗性細胞モデルを用いた実験によりCTBP1-ASはこれらの治療抵抗性癌の増殖を導く因子であることを見出した。 またmiRNAについてはmiR-29 familyの機能解析を進めた。miR-29 familyはアンドロゲン応答性に誘導を受け、抗アンドロゲン剤Bicalutamide抵抗性の細胞モデル(BicR細胞)で発現が上昇していた。さらにmiR-29a/bの抑制実験を行い細胞増殖、浸潤能の制御に関与していることを見出した。臨床サンプルよりRNAをlasercapture microdisection法により採取し癌の進行度と発現レベルとの相関傾向があることを見出した。さらにマイクロアレイ法によりmiR29 familyの前立腺癌においれ主要な標的遺伝子を見出し、miR29の機能の詳細を解析している。今後動物実験により治療抵抗性へ関与するメカニズムを示す予定である。
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