研究課題/領域番号 |
23791052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩倉 浩 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378615)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | グレリン / 細胞株 / 分泌調節 |
研究概要 |
これまでの研究で、我々は、世界で初めてグレリン分泌細胞株MGN3-1細胞を樹立することに成功した。昨年度からの検討で、ペプチドホルモンのうち、オキシトシンがグレリン分泌を刺激し、一方で、ソマトスタチンがSSTR2受容体を、インスリンがインスリン受容体を介して、グレリン分泌を抑制すること、また神経伝達物質のうち、アドレナリンがβ1受容体を介して、また、ドーパミンがD1受容体を介してグレリン分泌を刺激することを見いだし、本年7月に論文報告を行った。今年度はさらに、セカンドメッセンジャーについても検討を行い、β刺激薬がグレリン分泌を刺激する際に、グレリン細胞内cAMP濃度を上昇させることを確認した。Folskolinによって細胞内cAMPを上昇させると、グレリン分泌が刺激されることからも、cAMP経路がグレリン分泌調節の一つの重要なシグナル伝達経路であることを確認した。現在、さらにCa2+を介した経路に関しても、PKC阻害薬の添加や、培地中のCa濃度変化などがグレリン分泌へ与える影響を検討している。シグナル分子に介しても、インスリン添加によるシグナル伝達経路の確認などを進めつつある。ステロイドホルモン添加の影響に関しても、検討を開始している。栄養素に関しては、糖質、脂質、アミノ酸、ビタミン等がグレリン分泌へ与える影響の検討を開始しており、一部変化が認められたものについては、その分子機構の詳細を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のペプチドホルモン、神経伝達物質に関しては、受容体発現の検討、受容体サブタイプの同定、セカンドメッセンジャーの検討などがほぼ終了している。ステロイドホルモン、栄養素に関しても、ある程度結果は出そろいつつああるが、ペプチドホルモンや神経伝達物質と比較すると、ステロイドホルモンは、核内受容体を介して転写調節に関与することや、栄養素は必ずしも単純に受容体を介して、分泌調節に働くというわけでは無いということもあり、やや解析に時間を要している面があるが、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度予定のステロイドホルモンおよび各種栄養素によるグレリン分泌調節への影響の検討に関しては、これまでに得られているデータに基づき、さらに、詳細に受容体、シグナル経路にまで踏み込んで解析を行っていく予定である。同時に、元々24年度解析の予定であった、グレリン分泌の分子機構の解明という点からも、特にCaの影響などを中心に解析を進める予定である。当初24年度計画のグレリン生合成機構の検討については、特に脂質合成、代謝関連遺伝子のグレリン生合成における役割を検討しながら、同時に、脂肪酸を含めた栄養素がグレリン生合成に与える影響も検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、可能であれば前倒しで研究を進めることも考え、平成23年度分の配分を多くしたが、当初見込みほどの進展が得られなかったため、わずかに、当初見込み研究費の残余を生じた。本年度の研究費の使用内容としては、主には、細胞培養のための培地、培養皿、ピペットなどの消耗品、培地中へ添加する試薬、グレリン抽出、測定のための、C18カラムや試薬等、RNA抽出や定量PCR、その他遺伝子導入実験などの試薬を中心に研究費の使用を考えている。
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