研究課題/領域番号 |
23791055
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
有安 宏之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50378650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 内分泌代謝学 / グレリン |
研究概要 |
平成23年度までに申請者は、Diphtheria toxin receptor (DTR) 強制発現システムを用いて、後天的にグレリン分泌細胞を破壊しうるマウスを作製した。本年度は、このマウスを用いて循環血中グレリンの生理学的役割を検討することを目標に実験計画を立てた。 グレリン分泌細胞にDTRを強制発現するGPDTR-Tg(Ghrelin Promoter / Diphtheria Toxin Receptor-Tg)マウスは、ジフテリアトキシン(DT)投与によってグレリン分泌細胞が破壊され、血中グレリン濃度は検出限界以下まで低下する(野生型(WT)マウス vs. GPDTR-Tgマウス 64.0±6.0 fmol/ml vs. 5.0> fmol/ml )。この循環血中グレリンが低下したマウスを用いて、グレリンの摂食調節における役割を検討したところ、グレリン分泌低下マウスの1週間の平均摂食量は27.1±0.6 gであり、WTマウス28.2±0.6gと比較して有意な差を認めなかった。また昼夜の摂餌パターンの解析では、WTマウスが日中に1日摂餌量の22.7%、夜間に77.3%を摂取したのに対し、グレリン分泌低下マウスは、日中に22.0%、夜間に78.0%を摂取しており、両者の間に有意な差は認めなかった。これに加えて、16時間絶食後の再摂食量や社会行動ストレスを与えた状況下でも摂食について検討したが、有意な変化を認めなかった。解析し得た範囲において、血中グレリン濃度が低下した状況下においても、摂食行動は正常に維持されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、後天的グレリン分泌低下マウスを用いて、摂食に対するグレリンの生理学的意義の解明することを計画した。昨年度は、若年令マウスと成熟マウスを用いて、摂食の表現系について詳細な検討を行うことができた。また、糖脂質代謝、摂食に関連する神経ペプチドの解析にも着手しており、実験計画に対して、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に引き続きグレリン分泌低下マウスの表現形の解析を行う。 摂食対するグレリンの生理学的意義の検討では、青・壮年期マウスで、有意な所見が得られれば、生直後のマウスや離乳期のマウスを用いて、脳内のニューロンネットワークが構築された以前にグレリン分泌が低下させた状態でも比較検討する。更に週齢の経過した老齢マウスを用いて、そのグレリン分泌細胞を破壊し、老齢期におけるグレリンの生理学的役割を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
グレリン分泌低下マウスの系統維持繁殖に、経費の半分を使用することを予定している(約50万円)。表現系の解析に用いる、PCR等の試薬の購入費には、50万円を必要とする。結果の公表(論文・学会発表)にかかる費用として約14万円を予定している。
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