研究課題/領域番号 |
23791057
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三好 智子 岡山大学, 医療教育統合開発センター, 助教 (40444674)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 内分泌学 / 下垂体腫瘍 / 骨形成蛋白 / 薬物治療 |
研究概要 |
本研究は「下垂体腫瘍の発育・進展のメカニズムおよび薬剤作用機序との関連を明らかにし、臨床的に薬剤選択の指標を見出し、有効な下垂体腫瘍に対する内科治療法の開発を目指す」ことを目的としている。初年度の研究としては、下垂体腫瘍の継代細胞株を用い、BMP/activin分子による細胞増殖活性と内分泌活性への影響についてその作用メカニズムを探索した。薬剤としては、ソマトスタチンアナログ・ドパミン作動薬・PPARα/γアゴニストを用い、各治療薬による処理時に生ずる下垂体細胞の内分泌活性の変化とBMPシグナルとの機能的連関について検討した。とくに機能性下垂体腫瘍のなかでも難治性となりやすいクッシング病および先端巨大症の細胞モデルにおいて、新たな薬物反応性を検討し、日本内分泌学会に報告した。また、ゴナドトロピン分泌について、GnRH分泌における新たな神経ペプチド:メタスチン(metastin/kisspeptin)も、視床下部-下垂体でのBMP作用と機能的にリンクしており、GnRH分泌細胞を用い、BMPとメタスチンによるGnRH分泌制御機構も検討を進めている。さらに、ACTH分泌リズムと対照的に夜間分泌されるメラトニンとBMPの機能的連関も検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クッシング病および先端巨大症の細胞モデルにおいて、新たな薬物反応性を検討し、日本内分泌学会において発表した。また、ゴナドトロピン分泌について、GnRH分泌における新たな神経ペプチド:メタスチン(metastin/kisspeptin)も、視床下部-下垂体でのBMP作用と機能的にリンクしており、GnRH分泌細胞を用い、BMPとメタスチンによるGnRH分泌制御機構も検討を進めている。これらは論文作成中である。
|
今後の研究の推進方策 |
下垂体BMP/activinと下垂体作動薬の「シグナル連関」および視床下部「メタスチン」活性について分子レベルで探究し、in vitroの結果を「in vivoにおいて検証」する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)BMP特異的な転写因子であるSmad蛋白のリン酸化について、Western immunoblotにより検出する。(2)下垂体細胞におけるBMP/activinシグナル活性がD2R/SSTR/PPAR/RXRシグナルによってどのように変化するか、Smad1/5/8特異的reporter assayにより定量的に評価する。さらにゴナドトロープ細胞を始め下垂体ホルモン分泌に寄与するシグナルとして重要なMAPK: ERK1/2, p38, SAPK/JNKの活性化についても、Western blottingおよびMAPK特異的reporter assayを用いてMAPK活性化の変化を検出し、BMP/activinシグナルとD2R/SSTR/PPAR/RXRシグナルのクロストークについて探索する。同様にGT1-7細胞ではBMPシグナルとメタスチンシグナルの相互関係を検討するためにimmunioblotting/reporter assayを用いてBMP活性やMAPK活性の変化を確認する。(3)BMP受容体D2R/SSTR/PPAR/RXR-メタスチンシグナル伝達間interactionについては、BMPシグナルを特異的に抑制するfollistatin/nogginを用いてアプローチする。(4)下垂体細胞での発現遺伝子の変化を網羅的に探求するために、下垂体培養細胞からtotal RNAを抽出し、microarrayによる遺伝子群の発現変化も検討する。(5)これらの細胞から全蛋白を抽出して2D-electrophoresisによるプロテオーム解析を行い、薬物処理下垂体細胞モデルにおける蛋白発現プロファイリングを行う。これらのin vitroでの研究計画と並行して、ヌードマウスに腫瘍細胞を移植し、in vivo薬剤効果とBMPの関連を検討する。研究は比較的順調であり、225046円を翌年繰り越しとした。
|