研究課題
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制する降圧薬として、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII(Ang II)タイプ1 受容体拮抗薬(ARB)による有効性が知られるが、アルドステロンの抑制効果が減弱する「アルドステロンブレイクスルー現象」により再上昇したアルドステロンは、心腎血管障害などの臓器障害を惹起することが臨床的に問題となる。我々は以前に副腎皮質からのアルドステロン合成においてAng II と協調作用をもつBMP-6について報告し、副腎皮質に発現するBMP-6 がAng II によるアルドステロン産生を刺激し、一方でactivin はACTH によるアルドステロン産生を促進する機序を明らかにした。今回の研究では、ラットを用いて、内因性BMP-6 阻害によるアルドステロン産生能の変化をin vivo において検証した。BMP-6抑制モデルを作成し、アルドステロン分泌能の変化および副腎組織でのアルドステロン合成酵素の発現変化を中心に検討した。結果として、BMP-6抑制群において、尿中アルドステロン排泄量の有意な減少が認められた。しかしAng II 投与ラットでは、BMP-6 抑制による尿中アルドステロン分泌の抑制作用は減弱した。BMP-6 を抑制したラット副腎において、アルドステロン合成酵素CYP11B2 mRNA レベルの有意な抑制を認め、尿中アルドステロン排泄量と副腎におけるCYP11B2 の発現レベルは正の相関を呈した。さらに、BMP-6抑制ラットにおける血漿中のアルドステロン/コルチコステロン比は、BMP-6 抑制群において有意な低下を認めた。これらの結果を通じて、in vivo における内因性のBMP-6 は、副腎皮質におけるアルドステロン産生能において1つのキーファクターであることが示された。
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