研究課題/領域番号 |
23791065
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
森 美和 独立行政法人国立循環器病研究センター, 生化学部, 非常勤研究員 (50363148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 内分泌 / 神経ペプチド / 生理活性ペプチド / ニューロメジンS |
研究概要 |
生理活性ペプチドは、組織間あるいは細胞間の主要な情報伝達分子の1つであり、ホルモンとしての内分泌的調節に加え、神経ペプチドとして摂食、飲水、性行動及び睡眠覚醒などの本能行動や、生体の恒常性を維持するための自律機能を調節する。このように、生理活性ペプチドは、生体機能の調節において広範かつ重要な役割を果たしているため、新たな生体調節機構の解明を目的として、その機能解析研究が盛んに試みられている。ニューロメジンS(NMS)は、ニューロメジンU受容体の新たな内因性リガンドとして同定された神経ペプチドである。その遺伝子発現は、中枢神経系、脾臓及び精巣で認められ、視床下部での発現量が最も高い。また、幾つかの視床下部神経核にてNMS mRNAの発現が観察されているが、なかでも視交叉上核での発現が突出している。現在では、脳室内投与実験にて、概日時計の位相変位、摂食抑制、尿量減少、乳汁分泌増加が観察されるなど、NMSは脳内で興味深い機能を発揮することが示された。しかしながら、脳内でのペプチドの分布、すなわち、NMS産生ニューロンが構成する脳内神経ネットワークが不明なため、NMSの生理的役割は未だ完全には確立できていない。そこで、本年度はラット脳におけるNMSの分布をペプチドレベルで解析した。ラット脳の各領域におけるペプチド含有量を新たに開発したラジオイムノアッセイにて測定したところ、遺伝子発現量の多い視床下部だけでなく、発現量の少ない中脳、橋・延髄でも豊富にNMSが存在し、視床下部のNMS産生ニューロンから脳幹への神経線維投射が示唆された。また、免疫組織化学染色による解析では、脳幹網様体での免疫陽性反応が観察された。一方、脳幹での受容体の発現をリアルタイムPCRにて検討したところ、2型受容体の発現が確認されたが、その強度は視床下部のそれにはおよばなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、視床下部におけるNMSの興味深い機能が示されていたが、本年度の研究にてNMSの脳内分布を明らかにした結果、これまで考えられていなかった、視床下部のNMS産生ニューロンから脳幹への神経線維投射が示唆された。一方、脳幹ではNMSの2型受容体の遺伝子発現が認められた。本年度までのこれらの成果により、脳幹でのNMSの生理的役割が示唆することができたため、本研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、免疫組織化学染色によるNMSの脳内分布の解析を推進する。また、脳内でのNMS産生ニューロンによって構成される神経ネットワークをより明確に示すため、NMS遺伝子プロモーターの制御により蛍光タンパク質を過剰発現するトランスジェニックマウスを作出し、神経ネットワークの解明を試みる。これらに加え、これまでの研究では脳幹でのNMSの機能は明らかになっていないため、脳室内投与や脳幹への直接投与によって、脳幹におけるNMSの機能解析を試みる。また、既に作製済みであるNMSノックアウトマウスを用いて、生理的なNMSの役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は、主に旅費及び謝金として計画していたが使用しなかったものであり、これを翌年度は物品費として使用する予定である。本研究計画は、国立循環器病研究センターの保有する共同研究機器ならびに、国立循環器病研究センター研究所生化学部の機器を中心に使用するため、研究を遂行するための物品費(消耗品)を中心として研究費の使用を計画している。また、最新の知識・情報を収集するための調査・研究旅費、ならびに成果発表に関する必要経費の使用も計画している。
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