研究課題
近年、肥満症や摂食障害患者の急増によって注目される摂食行動やエネルギー代謝調節は、中枢神経系によって複雑でかつ多くの補償系の下に制御されている。中でも視床下部には制御を担う重要な神経核が多数存在し、多くの生理活性ペプチドとその受容体が機能制御に関与することが明らかにされている。本研究では、摂食行動やエネルギー代謝を制御する視床下部において、リガンドが不明なため機能が知られてない受容体(オーファンGPCR)に作用する未知の生理活性ペプチドを同定し、機能解析することを目的に研究を遂行した。具体的には以下に示す方法を導入し、従来の探索法の改善を試みた。(1)生理活性ペプチドに作用する内因性受容体の少ない細胞の利用:既に申請者はT細胞由来のjurkat細胞に既知ペプチドを作用させ、内在する既知ペプチド受容体が少ないという結果を得ている。本研究では、標的となるオーファンGPCRをjurkat細胞に発現させ、内因性受容体由来のシグナルが少ない活性検出系を構築した。この系において、組織抽出物より抽出したペプチド画分からのリガンド結合による特異的活性(細胞内Ca2+上昇、cAMP濃度変化等)を指標に探索を行ったが、新たな活性検出は認めなかった。(2)新しい活性検出系の確立:細胞のインピーダンスの変化を検出するCellKeyシステム(Molecular device社)を用いて、リガンド既知の受容体に対してリガンドを添加し、活性を検出するための最適な条件を構築した。(3)肥満動物からのペプチド抽出:高脂肪食飼育ラットを作製し、肥満ラットの各組織より酢酸抽出し、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーにて分画したペプチド画分を作製した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した平成23年度の研究実施計画の大部分は順調に進展している。
平成23年度に引き続き、摂食行動やエネルギー代謝を制御する視床下部において、リガンドが不明なため機能が知られてない受容体(オーファンGPCR)に作用する未知の生理活性ペプチドを同定し、機能解析することを目的に研究を遂行する。
平成23年度に引き続き、オーファンGPCRに作用する新規生理活性ペプチドの探索を継続する。標的GPCRに特異的な活性を検出次第、活性物質の精製を開始する。 標的GPCRに特異的な活性を検出できない場合、新規ペプチドの組織含有量が低い可能性が考えられる。また、肥満によって摂食やエネルギー代謝調節に関わる内分泌因子の組織含有量の変化が予想される。平成24年度において、肥満ラットの組織より抽出したペプチド画分をリガンド探索の出発材料とする。 特異的活性を検出できない原因として、オーファンGPCRが細胞表層膜に発現してない可能性も考えられる。上皮細胞や神経細胞由来の極性を有する細胞に内在する蛋白質がGPCRに結合し、細胞表層膜への輸送を促進することが報告されている。標的GPCRと緑色蛍光蛋白質が融合した発現ベクターを極性の有するMDCK、PC12細胞等に導入する。蛍光顕微鏡を用いて、標的GPCRが細胞表層膜に安定発現した細胞を調製し、探索に用いる。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 410 (4) ページ: 872, 877