研究課題
FoxO3aは細胞分化や生存に関与する転写因子であり、免疫担当細胞の機能調節においても重要な役割を担っている。ヒト単球由来樹状細胞(MoDC)において、siRNAを用いてFoxO3aをノックダウンした際の機能の変化について解析を行ったところ、共刺激分子であるCD80/86の発現上昇、共培養したT細胞の分裂割合増加、炎症性サイトカインであるTNFαの産生亢進などが観察された。これらの結果から、FoxO3aは樹状細胞における免疫応答を負に制御する因子である可能性が示唆された。次に、樹状細胞の活性化を誘導するNF-κBに関して、FoxO3aとの関連を検討した。FoxO3aノックダウンを行った際に、NF-κBの発現亢進が観察されたことから、FoxO3aによる免疫抑制はNF-κBを介して行われる可能性が考えられた。また、レンチウイルスベクターを用いてFoxO3aの機能が常時亢進している状態、または常時抑制された状態を誘導し、それらを比較することでNF-κBの活性化やその他の分子の関与について検討を重ねている。FoxO3aと協調して樹状細胞の抑制に関与する分子が同定されることで、樹状細胞の免疫抑制機構をより詳細に解明することが可能になる。がん治療を目的とした樹状細胞療法やワクチン療法の改良には免疫担当細胞の抑制状態を解除する方法の開発が不可欠である。本研究により、臨床応用可能な樹状細胞の活性化方法の開発を目指している。
3: やや遅れている
本研究ではヒト末梢血および臍帯血から分離した単球を用いて樹状細胞を調整する方法を選択した。これら細胞の入手が困難な時期が発生したことにより、研究の進捗がやや遅れた。また、作成したウイルスベクターの感染効率が予想よりも低く、条件検討に時間を要したことも影響した。
FoxO3aがNF-κBを抑制する機構についてさらに詳細な解析を行う。FoxO3aを恒常的に活性化させるためのプラスミドや、FoxO3a dominant negativeのプラスミドを導入した細胞株および単球由来樹状細胞を用いて、NF-κBの活性化や抑制に関わる分子を探索する。さらに、その分子の発現量、リン酸化状態、細胞内局在を解析する。FoxO3aがNF-κBを抑制する際に協調して働く分子を同定した後は、その分子に対する阻害剤を用いることで、樹状細胞の活性化を誘導できるかについて検討を行う。樹状細胞の活性化に関連して、樹状細胞が産生する炎症性および抑制性サイトカインのプロファイルの解析を行う。樹状細胞の抗原提示能や活性化に関して、FoxO3aと協調して抑制性に機能する分子を探索する。制御性T細胞による樹状細胞の抑制にはCTLA-4が必須であることが判明している。このため、樹状細胞にCTLA-4刺激を与えた際に、FoxO3aや他の抑制性分子の機能がどのように変化するかについて解析を行う。CTLA-4を強制発現させた細胞を用いて樹状細胞にCTLA-4刺激を加えた後、FoxO3aおよび他の抑制性分子の活性化や局在にどのような影響があるかを検討する。CTLA-4刺激存在下でも樹状細胞の活性化を誘導できる方法を確立した後に、がん免疫療法への応用を目指しマウスモデルを用いて腫瘍免疫に関する検討を行う。これら樹状細胞における抑制性分子を阻害することで、制御性T細胞のCTLA-4による免疫抑制を回避する方法を開発する。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い、発生した未使用額である。平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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