研究概要 |
造血幹細胞(CD34-KSL)において、CD150の発現と自己複製能が相関することが知られている。今回我々は、CD150+CD34-KSLに特異的に高発現するDlk-Dio3クラスター内のmicroRNAをCD34-KSL細胞に強制発現させ、移植によってキメリズム、つまり自己複製能が上昇するmicroRNAのスクリーニングを行ったが、キメリズムの上昇するmicroRNAは同定できなかった。そこで、Dlk-Dio3クラスター群以外のCD150+CD34-KSLに特異的に高発現するmicroRNAも検討すると、CD150+CD34-KSLには、mir34a, mir10a, mir130aなど、巨核球系にも発現、あるいはその機能に関与すると報告されているものも多数含まれていることが分かった。つまり、CD150+CD34-KSL画分は、造血幹細胞以外の細胞を含んでいるヘテロな集団であることが示唆された。そこでまず、その画分の細胞の分化能を評価するために白血球だけでなく血小板・赤血球においても蛍光タンパクが発現するトランスジェニックマウスを用い、その単一細胞移植による機能解析を行った。その結果、これまで造血幹細胞が多数含まれていると考えられていたCD150+CD34-KSL画分には、長期自己複製能のあるmegakaryocyte progenitor, megakaryocyte-erythroid progenitor, common myeloid progenitorを含むことが明らかとなった。本研究により、造血幹細胞画分に新たな細胞の存在が明らかとなり、自己複製能に関与するmicroRNAの同定にはさらに造血幹細胞画分の濃縮が必要であることが示唆される。また、上記のmicroRNAは、これら骨髄球系血球への分化を制御していることが考えられる。
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