研究課題/領域番号 |
23791079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中嶋 康博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40548567)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | PD-1 / leukemia / immunosenescence |
研究概要 |
白血病発症時に急激に増加するPD-1+CD44+CD4+T細胞について解析行った。PD-1+T細胞は若年齢のマウスにはほとんど認められないが、白血病株を注射後、白血病の進行と共に出現する。このPD-1+T細胞はT細胞受容体刺激に対する増殖能が極度に低下しており、またいずれのサブクラスのT細胞特異的なサイトカインの産生も認められなかった。一方IL-15に対する反応性はコントロール群に対し5倍以上も上昇しており、さらにオステオポンチンなどの向炎症性タンパクの分泌が確認された。また生体内の2次リンパ組織においてはB細胞領域に局在していた。表面マーカー、局在などは近年同定されたFollicular helper T細胞(Tfh)と類似しているが、その増殖能・サイトカイン産生能において明らかにTfhとは異なる細胞であり、その形質を誘導する特定の遺伝子同定に取り組んでいる。ヒトの白血病患者は重度の免疫不全状態にあり、感染リスク増大が治療の大きな妨げとなっている。PD-1+T細胞はマウスの白血病発症と同時に増加しており、免疫システム全体の機能不全の一端を担っている可能性が示唆された。今後ヒトの白血病患者においてPD-1+T細胞が出現しているかを精査したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験に使用する遺伝子改変マウスの繁殖・作成が予定どおり進まなかったために、実験着手に遅延が生じた。その他はおおむね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ、real-time PCRを用いた遺伝子精査により、通常のT細胞とは明らかに発現パターンの異なるいくつかの遺伝子を見いだした。その遺伝子のノックアウトマウス、トランスジェニックマウスにおいて、PD-1+T細胞の出現に変化があるのか、またその機能の回復が認められるかどうかを確認する。またヒトの造血器腫瘍患者において、健常人と比べてPD-1+T細胞が増加しているかどうかを確かめたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種試薬・抗体の購入に大部分を使用する予定であり、これは各種臓器からCD4+T細胞を選択的に回収するにあたり抗体特異的な磁気ビーズが必要なためである。腫瘍細胞の混入をできる限り抑えることは、T細胞群の遺伝子発現を調べる際やT細胞の抗原刺激反応性を確かめるためには必須の条件であり、現在の方法を継続する意味があると考える。
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