白血病発症時に急激に増加するPD-1+CD44+CD4+T細胞について解析行った。PD-1+T細胞は若年齢のマウスにはほとんど認められないが、白血病株を注射後、白血病の進行と共に出現する。このPD-1+T細胞はT細胞受容体刺激に対する増殖能が極度に低下しており、またいずれのサブクラスのT細胞特異的なサイトカインの産生も認められなかった。一方IL-15に対する反応性はコントロール群に対し5倍以上も上昇しており、PD-1+T細胞を放射線照射マウスに移植すると、PD-1-細胞と同等に増殖することが分かった。つまりPD-1+T細胞はT細胞受容体を介したクローン増殖(clonal expansion)の能力を欠いているが、生体内での恒常的増殖(homeostatic proliferation)は行うことの出来るユニークな細胞と言える。さらにオステオポンチンなどの向炎症性タンパクを過剰に分泌している事が確認された。また生体内の2次リンパ組織においてはB細胞領域に局在していた。表面マーカー、局在などは近年同定されたFollicular helper T細胞(Tfh)と類似しているが、その増殖能・サイトカイン産生能において明らかにTfhとは異なる細胞であり、その形質を誘導する特定の遺伝子同定に取り組んでいる。 またヒトの白血病患者は重度の免疫不全状態にあり、感染リスク増大や再発が治療の大きな妨げとなっている。PD-1+T細胞はマウスの白血病発症と同時に増加しており、免疫システム全体の機能不全の一端を担っている可能性が示唆された。ヒトの白血病患者における、PD-1+T細胞の動態と微少残存病変および再発との関連について、現在精査を行っている。
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