研究課題
多発性骨髄腫では,正常造血における造血幹細胞と同様,骨髄微小環境においてごく少数の骨髄腫幹細胞が未分化性を維持しつつ自己複製を行っていると考えられる.近年,多発性骨髄腫に対して,骨髄微小環境に作用する分子標的薬が使用されるようになったが,腫瘍細胞を根絶するのは依然困難であり,延命効果が得られても根治することは望めない.本研究では,これまで着目されていなかった多発性骨髄腫患者の骨髄微小環境下における単球の役割を解析し,多発性骨髄腫の根治療法につながる基礎研究を展開した。本研究により,骨髄微小環境における骨髄ストローマ細胞や単球との多発性骨髄腫細胞との相互分化増殖作用の分子機序が明らかになった。さらに本研究では骨髄ストローマ細胞と単球,あるいは骨髄腫細胞と単球の相互作用,また,骨髄ストローマ細胞と骨髄腫細胞の相互作用における単球や樹状細胞の関わりについて解析することができた。これらの研究は、日本で行われている施設はなく国際的にも独創的な研究である。その成果は耐性化しやすい骨髄腫患者の病態解析や抗がん剤耐性化の機序解明に大きく貢献できることが予想される。さらに骨髄微小環境の解析は,多発性骨髄腫の骨病変に対する治療や病態解明につながることが予想される。またその成果によっては,多発性骨髄腫のみではなく他の血液がんや乳がんなどの骨転移を起こしやすい疾患の病態解明につながることが考えられ,当研究が見出す効果はがん領域全体に対する治療戦略に大きなインパクトを及ぼすことが期待される。
すべて 2013
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Genome Med.
巻: 10 ページ: 88-92