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2012 年度 実施状況報告書

髄外造血モデルを用いた新規ニッチ細胞の同定と性状解析

研究課題

研究課題/領域番号 23791093
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

水上 拓郎  国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (60415487)

キーワード造血幹細胞 / ニッチ / SDF-1 / Osteopontin
研究概要

【研究の目的】造血幹細胞は多分化能と自己複製能を有した細胞であるが、その機能維持にはニッチの存在が必要と考えられている。 骨髄に履いては骨芽細胞がそのニッチとして機能している事が示唆されているが、脾臓などの他の器官でのニッチについては不明な点が多い。そこで我々は、脾臓などの髄外造血モデルを用いて骨髄以外のニッチ細胞の同定を試みた。その結果、脾臓に於いて巨核球様 (MLCs: Megakaryocyte-like cells)の細胞が造血幹細胞近傍に存在し、様々なニッチに関わる分子を発現している事を明らかにした。 またin vitroで造血幹細胞の増殖を促進する事が明らかとなった。
【研究結果】そこでMLCsの分子基盤を明らかにする目的で髄外造血モデル及びCFU-Sモデルを用いてMLCsを単離し、cDNAを合成しDNAマイクロアレイ解析を行い、MLCsに高発現する分子を多数同定した。MLCsは造血幹細胞(LSK細胞)移植後8日目には赤脾随内に集合し、SDF-1やOPN、N-cadherinなどを発現することが明らかとなった。GFPマウスより分取したLSK細胞の追跡の結果、多くのGFP陽性L SK細胞がMLCs細胞近傍に存在している事が明らかとなった。そこで、MLCをCFU-S8の脾臓及び通常の脾臓より分取し、KSL細胞と共培養した結果、CFU-S8由来のMLC細胞は、KSL細胞の維持と増殖に寄与している事が明らかとなった。また、同様の細胞が放射線照射後や抗がん剤投与後の骨髄再建が起きる時にも認められる事から、MLCが一過性のニッチ形成のみならず、再建時においても重要な役割を示す事が示唆された。
これらの結果より、脾臓内では血管内皮などに加え、MLC細胞などが様々なCytokineを産生し造血幹細胞の増殖に寄与している事が 明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では髄外造血など定常状態ではない造血に関し、新たな造血ニッチを同定し、その特性を解明する事を目的としている。本研究 において我々は髄外造血機構を用いて、脾臓内に新たな巨核球様(MLCs: Megakaryocyte-like cells)の細胞がニッチ細胞の一つとして 機能する事を示す事ができた。また予定通りMLCヲ分取し、分子基盤を解明する事で、巨核球との違い、他のニッチ細胞との違いも含め明らかにする 事ができた。その中で、既存のニッチ分子が高頻度で発現している事を明らかにし、更に、in vitroでもKSLの維持と増殖に寄与していることを明らかにすることに成功した。また、CFU-Sのみならず、放射線障害や抗がん剤投与モデルにおける骨髄再建時にもMLCの出現が認められる事を発見した。

今後の研究の推進方策

今後は計画予定通り、これらのニッチ細胞において発現している分子のうち、新規のもの、未知のものについて、SiRNAを作製し、機能阻害をおこなった場合、KSLの維持においてどのような影響、特に細胞分化、Stemnessへの影響を検討し、新しいニッチ分子を同定する事を目的とする。また、ここまでのデータを論文として発表する準備を行っている。

次年度の研究費の使用計画

研究論文発表に関する費用及び最終の追試実験等に用いる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Degenerate polymerase chain reaction strategy with DNA microarray for detection of multiple and various subtypes of virus during blood screening.2013

    • 著者名/発表者名
      Takizawa K, Nakashima T, Mizukami T, Kuramitsu M, Endoh D, Kawauchi S, Sasaki K, Momose H, Kiba Y, Mizutani T, Furuta RA, Yamaguchi K, Hamaguchi I.
    • 雑誌名

      Transfusion

      巻: 53 ページ: 2545-2555

    • DOI

      10.1111/trf.12193

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The earliest thymic T cell progenitors sustain B cell and myeloid lineage potential.2012

    • 著者名/発表者名
      Luc S, Luis TC,..., Mizukami T, Mats........, Patient R, de Bruijn M, Enver T, Nerlov C, Blackburn C, Godin I, Jacobsen SE.
    • 雑誌名

      Nature Immunology

      巻: 13(4) ページ: 412-419

    • DOI

      10.1038/ni.2255.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extensive gene deletions in Japanese patients with Diamond-Blackfan anemia.2012

    • 著者名/発表者名
      Kuramitsu M, Sato-Otsubo A, ....., Mizukami T, Yamaguchi K, Ogawa S, Ito E, Hamaguchi I.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 119(10) ページ: 2376-2384

    • DOI

      10.1182/blood-2011-07-368662

    • 査読あり
  • [学会発表] Identification of Leukemic stem cell and their niche in adult T cell leukemia (ATL) in the Tax-transgenic mouse model.2012

    • 著者名/発表者名
      Takuo Mizukami, Kazuya Takizawa, Madoka Kuramitsu, Haruka Momose, **Jumpei Yamazaki, ***William Hall, *Hideki Hasegawa, Kazunari Yamaguchi, Isao Hamaguchi
    • 学会等名
      54th American Society of hematology
    • 発表場所
      Atlanta, USA
    • 年月日
      20121207-20121213
  • [学会発表] ATL癌幹細胞のニッチ形成過程における破骨細胞の役割2012

    • 著者名/発表者名
      水上拓郎、滝澤和也、狭間俊介、倉光球、百瀬暖佳、益見厚子、長谷川秀樹、浜口功
    • 学会等名
      第74回 日本血液学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20121019-20121021
  • [学会発表] マウスモデルを用いたATL癌幹細胞及びそのニッチの解析2012

    • 著者名/発表者名
      水上 拓郎、滝澤 和也、山崎 淳平、倉光 球、百瀬 暖佳、益見 厚子、長谷川 秀樹、山口 一成、浜口 功
    • 学会等名
      第154回 日本獣医学会
    • 発表場所
      岩手
    • 年月日
      20120914-20120916

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公開日: 2014-07-24  

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