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2011 年度 実施状況報告書

MOZ/MLL融合遺伝子による急性骨髄性白血病発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23791094
研究機関独立行政法人国立がん研究センター

研究代表者

勝本 拓夫  独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (50469970)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード急性骨髄性白血病 / 融合遺伝子 / 遺伝子発現制御
研究概要

本年度は、MOZ/MLL融合遺伝子による標的遺伝子発現亢進における内在性のMOZの役割を中心に解析を行った。最初に正常のMOZとMeis1の発現との関係について、MOZ欠損造血幹細胞を分離してMeis1遺伝子の発現を解析した。その結果MOZ欠損造血幹細胞においてMeis1遺伝子の発現は顕著に減少していた。このことからMeis1についてもHoxA9と同様にMOZの標的遺伝子であることが示唆された。これまでの解析からMOZ欠損細胞においてもサイトカインの条件によって白血病細胞化、HoxA9遺伝子の発現亢進が誘導されることを報告してきたが、さらに解析を進めた結果、胎生13.5日といった胎齢がより若いMOZ欠損細胞では、サイトカインの条件に関わらずMOZ融合遺伝子を導入すると白血病細胞化が見られた。一方MLL融合遺伝子については、いずれの条件においてもMOZ欠損細胞では白血病細胞化は見られなかった。さらにMOZ融合遺伝子による標的遺伝子発現誘導と内在性のMOZとの関係について、クロマチン免疫沈降法を用いて標的遺伝子領域のヒストン修飾を解析した。MOZ融合遺伝子によってMOZ欠損細胞において白血病細胞化、HoxA9遺伝子の発現亢進が誘導される条件では、発現が誘導されるHoxA9領域の活性化ヒストン修飾は、MOZヘテロ欠損細胞と同程度かもしくはやや減少していたが、一方発現が誘導されないMeis1遺伝子領域では活性化ヒストン修飾がヘテロ欠損細胞と比べて顕著に減少していた。現在MOZ及びMLL遺伝子の局在についても解析を進めている。以上の結果から、MOZはMOZ/MLL融合遺伝子の標的遺伝子であるHoxA9/Meis1領域のクロマチン状態を制御することによって白血病発症に寄与していることが示唆された。またその制御機構は標的遺伝子及び融合遺伝子によって異なることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、MOZ融合遺伝子を発現する白血病細胞において発現が亢進しているHoxA9/Meis1遺伝子領域のクロマチン制御における内在性のMOZの役割をMOZ欠損造血前駆細胞を用いてクロマチン免疫沈降法で解析を行った。その結果MOZ欠損白血病細胞では発現誘導が見られないMeis1遺伝子領域の活性化ヒストン修飾が顕著に減少していることを明らかにした。またMOZ/MLLの局在については現在解析中である。加えてMOZ/MLL融合遺伝子による白血病細胞化における内在性のMOZの必要性について、標的遺伝子及び融合遺伝子によって異なることを明らかにした。本年度に行う予定であったMOZ融合遺伝子による白血病の各表現型と遺伝子発現との相関については次年度に遺伝子発現解析を行い、続けてMOZ/MLL融合遺伝子白血病における機能解析を行う予定である。次年度実施予定のMOZ/MLL融合遺伝子白血病細胞の維持における内在性のMOZの機能解析に用いる誘導型MOZ欠損マウスはES細胞のスクリーニングまでが終了していて、予定通り解析に使用可能であると考えられる。

今後の研究の推進方策

次年度もMOZ/MLL融合遺伝子による白血病の分子機構について解析を行う。本年度の解析から、MOZ欠損造血前駆細胞にMOZ融合遺伝子を導入した白血病細胞では、発現誘導が見られないMeis1遺伝子領域において遺伝子が活性化されているときに見られるようなヒストン修飾が顕著に低下していることが明らかとなった。この結果からこれらのヒストン修飾に関わるヒストン修飾酵素のMeis1遺伝子領域への局在の有無について、クロマチン免疫沈降法を用いて解析を行う。またMOZ欠損白血病細胞でMOZ融合遺伝子自体がHoxA9/Meis1領域に局在しているかについて、クロマチン免疫沈降法を用いて解析する。以上の解析からMOZ/MLL融合遺伝子によるHoxA9/Meis1発現誘導における内在性のMOZの役割について明らかにする。次にそれぞれ表現型が異なるMOZ融合遺伝子による白血病細胞において遺伝子発現解析を行い、MOZ/MLL融合遺伝子及び主な標的遺伝子であるHoxA9/Meis1遺伝子の下流遺伝子と考えられる遺伝子を明らかにする。さらにそれらの遺伝子について、クロマチン免疫沈降法による標的遺伝子領域への結合の有無やshRNA発現による遺伝子発現抑制もしくは過剰発現によって白血病発症及び維持における機能解析を行い、MOZ/MLL融合遺伝子による白血病の分子機構の解明を目指す。さらに現在作成中の誘導型MOZ欠損マウスやMOZ shRNAを用いてMOZ/MLL融合遺伝子による白血病細胞の維持における内在性のMOZの役割をクロマチン免疫沈降法などを用いて明らかにする。以上の結果をまとめて、学会発表及び論文発表を目指す。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費は主に以下の解析に必要な試薬購入等に使用する予定である。本研究で用いるMOZ/MLL遺伝子欠損マウス及びMOZ/MLL融合遺伝子白血病モデルマウスの作製に必要なマウスの飼育管理費用に使用する。またIn vitroの解析において白血病細胞の培養に用いる細胞培養試薬の購入に使用する。さらに白血病細胞の解析を行うために各種の表面抗原を認識する蛍光標識抗体購入に使用する。また融合遺伝子導入用ウイルス作製、遺伝子発現抑制のためのshRNA導入用ウイルス作製、マイクロアレイ及びRT-PCR法によって遺伝子発現解析及びクロマチン免疫沈降法を行うために細胞培養試薬や核酸操作作用試薬購入に使用する。加えてクロマチン免疫沈降法及びウエスタンブロット解析を行うために、修飾ヒストンに対する抗体及び核酸/タンパク質作用試薬購入に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 造血器腫瘍学―転写制御2012

    • 著者名/発表者名
      勝本 拓夫
    • 雑誌名

      日本臨床

      巻: 70 ページ: 75-78

  • [雑誌論文] 転写共役因子を介した造血幹細胞と白血病幹細胞の制御機構2011

    • 著者名/発表者名
      勝本拓夫、北林一生
    • 雑誌名

      Mebio

      巻: 28 ページ: 9-17

  • [雑誌論文] The Hbo1-Brd1/Brpf2 complex is responsible for global acetylation of H3K14 and required for fetal liver erythropoiesis2011

    • 著者名/発表者名
      Yuta Mishima, Takuo Katsumoto
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 118 ページ: 2443-2453

    • DOI

      10.1182/blood-2011-01-331892

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒストンアセチル化酵素MOZの急性骨髄性白血病における役割2012

    • 著者名/発表者名
      勝本 拓夫
    • 学会等名
      「個体レベルでのがん研究支援活動」ワークショップ
    • 発表場所
      琵琶湖ホテル
    • 年月日
      2012年1月19日
  • [学会発表] MOZ is critical for MOZ/MLL-fusion-induced HoxA9/Meis1 expression and leukemia development2011

    • 著者名/発表者名
      Takuo katsumoto
    • 学会等名
      53rd ASH annual meeting and exposition
    • 発表場所
      San Diego Convention Center (USA)
    • 年月日
      2011年12月12日
  • [学会発表] Histone acetyltransferase MOZ and MORF are essential for hematopoiesis and self renewal of hematopoietic stem cells2011

    • 著者名/発表者名
      勝本拓夫、北林一生
    • 学会等名
      第9回幹細胞シンポジウム
    • 発表場所
      泉ガーデンギャラリー
    • 年月日
      20110500

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公開日: 2013-07-10  

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