本年度は昨年度に引き続き、MOZ/MLL融合遺伝子による白血病発症における内在性のMOZの役割を中心に解析を行った。最初にMOZ欠損MOZ融合遺伝子白血病細胞で発現が変化している遺伝子を探索した。その結果、細胞周期抑制遺伝子の一つであるp16/p19 INK4A遺伝子がMOZ欠損MOZ融合遺伝子白血病細胞で発現亢進していることを見出した。この結果はMOZ欠損MOZ融合遺伝子白血病細胞でコロニー形成が見られる条件においても依然として細胞増殖能が低い原因の一つであることが示唆された。さらにこれまでにMOZ欠損細胞にMOZ融合遺伝子を導入した細胞では不死化能は獲得されるが白血病発症能が失われていること、HoxA9の発現亢進は見られるがMeis1の発現亢進は起こらないことを報告してきた。そこでMOZ欠損細胞にMOZ融合遺伝子と同時にMeis1遺伝子を導入することで白血病発症能が回復するか解析を行った。その結果MOZヘテロ欠損細胞と比べて発症時期が遅れるが、MOZ欠損細胞においても白血病発症が誘導されることがわかった。この結果から白血病発症における内在性のMOZの作用点として、融合遺伝子によるHoxA9/Meis1遺伝子の発現亢進がその中心であることが示唆された。 以上本研究から内在性のMOZは、ヒストン修飾などを制御することによってMOZ/MLL融合遺伝子の標的遺伝子であるHoxA9/Meis1遺伝子領域のクロマチン状態を活性化状態にすることで、MOZ/MLL融合遺伝子による転写の恒常的活性化に寄与し、さらに白血病発症に寄与していることが示唆された。またこれらの結果からMOZが、HoxA9/Meis1遺伝子の発現亢進が見られるような白血病で治療標的候補となりうることが示唆された。
|