研究課題/領域番号 |
23791100
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坪井 洋人 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80580505)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 自己免疫疾患 / 自己抗体 / M3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体 / 自己反応性T細胞 |
研究概要 |
【目的】シェーグレン症候群(SS)において、近年注目されている自己抗原であるM3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する免疫応答を明らかにする。1)抗M3R抗体 SSの疾患特異性を明らかにする。2)M3R反応性T細胞 SS患者の末梢血中において、M3R反応性T細胞の存在を明らかにする。【方法】1)抗M3R抗体 疾患コントロールとして、関節リウマチ(RA)21例、全身性エリテマトーデス(SLE)21例、原発性胆汁性肝硬変(PBC)84例、後天性無汗症12例の血清を用いて、M3R合成ペプチド(N末端、第1・2・3細胞外ループ)を抗原としたELISAにより、抗M3R抗体を測定した。2)M3R反応性T細胞 抗M3R抗体陽性SS患者のうち、PBMCの採取が可能な患者を抽出した。【結果】1)抗M3R抗体 N末端に対する抗M3R抗体は、RAで42.9%(9/21例)、SLE28.6%(6/21例)、PBC90.5%(76/84例)、後天性無汗症16.7%(2/12例)の陽性率であった。第1細胞外ループに対する抗M3R抗体は、それぞれ、33.3%(7/21例)、28.6%(6/21例)、72.6%(61/84例)、0%(0/12例)の陽性率であった。第2細胞外ループに対する抗M3R抗体は、それぞれ、33.3%(7/21例)、57.1%(11/21例)、76.2%(64/84例)、0%(0/12例)の陽性率であった。第3細胞外ループに対する抗M3R抗体は、それぞれ、33.3%(7/21例)、28.6%(6/21例)、69.0%(58/84例)、0%(0/12例)の陽性率であった。2)M3R反応性T細胞 3例のSSが抽出された。【結論】RA、SLE、PBCにおいても抗M3R抗体が検出され、特にPBCでは高い陽性率であった。一方で後天性無汗症では抗M3R抗体は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗M3R抗体の疾患特異性の検討については、順調に疾患コントロールの血清採取が進み、抗M3R抗体の測定を行うことができた。一方で、抗M3R抗体の機能解析に関しては、次年度での検討が必要である。また、より多数例のSSで抗M3R抗体を測定し、抗体の有無と臨床像との関連の解析を進める。また、M3R反応性T細胞の解析に関しては、現時点では解析対象SS患者の抽出と、PBMCからIFNγおよびIL-17 産生細胞をMACS cytokine secretion assayを用いて検出・分離する系の条件設定の段階である。次年度SS患者PBMC中のM3R反応性T細胞を単離し、TCRのレパトア解析、CDR3領域のsequenceを行い、クローナリティーの解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)抗M3R抗体 多数例のSSで抗M3R抗体をM3R合成ペプチド(N末端、第1・2・3細胞外ループ)を抗原としたELISAで測定し、抗体の有無と臨床像(唾液・涙液分泌、角結膜障害、M3Rアゴニストに対する反応性)との関連を解析する。また、ヒト唾液腺(HSG)細胞株を抗M3R抗体陽性および陰性SS、健常人のIgGと共培養し、HSG細胞株表面のM3R発現を免疫蛍光法・Western Blot法で比較する。2)M3R反応性T細胞 抗M3R抗体陽性および陰性SS患者のPBMCをM3R合成ペプチド(N末端、第1・2・3細胞外ループ)で刺激し、M3Rに反応してIFNγおよびIL-17を産生するM3R反応性T細胞をMACS cytokine secretion assay(IFNγ、IL-17)を用いて単離し、TCRのレパトア解析、CDR3領域のsequenceを行い、クローナリティーの解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ELISAの抗原、PBMCの刺激抗原として用いるM3Rペプチド(N末端、第1・2・3細胞外ループ)を、それぞれ10mg合成する。また、MACS cytokine secretion assay(IFNγ、IL-17)に必要なキット、細胞分離に必要なMACSカラムを購入する予定である。
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